忙しい毎日で完璧主義を手放す。これでOKと切り上げる勇気を育むワーク
完璧主義が、「時間がないのに終わらない」ループを作る時
仕事、家事、育児と、毎日たくさんのタスクを抱えていると、時間があっという間に過ぎていきます。ひとつひとつのことを「完璧に」こなそうとすればするほど、時間は足りなくなり、思うように終わらない自分に自己嫌悪を感じてしまうことはありませんでしょうか。
「もう少し、もう少しだけ頑張れば完璧になるのに…」 「ここで手を抜いたら、後でもっと大変になるかもしれない」
そう考えて、本来切り上げるべきタイミングでタスクを手放せず、次のやるべきことがどんどん積み重なっていく。気づけば一日中時間に追われ、心も体も休まる暇がない。そんな経験があるかもしれません。
完璧主義の傾向は、一つのタスクにじっくり取り組む時には強みになります。しかし、多くのことを同時並行で進めなければならない忙しい日常においては、かえって足かせとなり、時間と心に余裕を失わせてしまうことがあります。
限られた時間の中で、次々と現れるタスクに対応していくためには、「全てを完璧に終える」という考え方から一度離れてみることが大切です。今回は、忙しい毎日の中で、「これでOK」と潔く切り上げる勇気を育むための具体的なワークをご紹介します。
「切り上げる勇気」が、忙しさを乗り切る鍵となる
完璧主義が「切り上げる」ことを難しくするのは、「中途半端は失敗だ」「最後までやり遂げなければ意味がない」といった思考パターンや、他者からの評価、あるいは自分自身の内なる厳しい声が関係しています。完璧でない結果を恐れるあまり、終わりの見えない作業に時間を費やしてしまうのです。
しかし、考えてみてください。完璧にこだわって一つのタスクに時間をかけすぎた結果、他のもっと重要なタスクに着手できなかったり、休憩する時間がなくなって心身が疲弊したりすることは、本当に望ましい状態でしょうか。
「これでOK」と意図的に切り上げることは、決して「手抜き」や「投げやり」ではありません。それは、限られた資源(時間、エネルギー)をより効果的に分配し、全体を円滑に回すための戦略的な判断です。完璧を目指すのをやめることで、かえって多くのタスクを「完了」させ、次のステップに進むことができるようになります。
そして何より、「完璧でなくても大丈夫なんだ」という成功体験を積み重ねることで、自己肯定感が育まれ、不完全な自分を許し、労わる習慣につながります。
「これでOK」と切り上げる勇気を育むワーク
では、具体的にどのように「切り上げる勇気」を育んでいくのか、今日からすぐに試せるワークを3つご紹介します。
ワーク1:【事前設定】「完了」の基準を自分で決めるワーク
タスクに取りかかる前に、「これが終わったらOKにする」という基準を具体的に設定します。完璧な状態ではなく、「これだけできたら次へ進もう」「ここまでやれば後で困らないだろう」という自分なりの合格ラインを意識的に決めます。
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やり方
- 今日やることリストの中から、一つタスクを選びます。(例:夕食の準備、メール返信、子どもの宿題チェック)
- そのタスクについて、「完璧な状態」を一度思い描いてみます。
- 次に、「そこまでやらなくても、自分にとって、あるいは次にやる人にとって、これだけできていれば最低限困らないだろう」という基準、あるいは「今の時間やエネルギーで無理なく到達できる範囲」の基準を考えます。
- その「これでOK」の基準を、タスクの横やメモに書き出しておきます。(例:夕食準備 → 主菜と副菜1品完成、メール返信 → 重要度高の3件返信、宿題チェック → 国語と算数だけ見て丸つけ)
- タスクに取り組み、設定した「これでOK」の基準に達したら、きっぱりと作業を終えます。
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効果 タスクの終わりが明確になるため、どこまでやればいいのか分からず漫然と時間をかけてしまうことを防ぎます。「完璧でなくても終わりにしていい」という許可を自分に与える練習になります。
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実践のポイント 最初は、普段から「もう少し頑張れば…」と思いがちな、比較的小さなタスクから試してみてください。基準を設定する際は、自分を追い込むような高い基準ではなく、「これならできそう」と思える現実的なラインに設定することが大切です。
ワーク2:【時間制限】タイマーで強制終了ワーク
特定のタスクに意図的に制限時間を設けて取り組みます。時間になったら、たとえ作業途中でも強制的に終了し、次のタスクへ移る練習です。
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やり方
- 今日やることリストの中から、制限時間を設けて取り組みたいタスクを選びます。(例:洗い物、書類の整理、読書)
- そのタスクに充てる時間を決めます。(例:15分、30分)
- スマートフォンのタイマーやキッチンタイマーをセットし、スタートします。
- 時間内にできるところまで集中して取り組みます。
- タイマーが鳴ったら、すぐに手を止め、作業を終了します。もし作業が途中であれば、次に何をすればいいか簡単なメモを残しておきます。(例:「書類Aは途中まで分類済、次は書類Bから」「本の〜ページまで読んだ」)
- 終了したタスクのことはいったん脇に置き、次のタスクへ移ります。
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効果 「時間内にできる最大限をやればOK」という感覚を養えます。完璧に終わらせることを諦める訓練になり、「完璧でなくても世界は終わらない」という安心感につながります。中断する勇気を持つことで、別のタスクに着手する時間を作れます。
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実践のポイント 最初は短時間で終えられるタスクや、中断しても大きな問題にならないタスクから始めましょう。タイマーが鳴った時に「もう少しだけ…」という誘惑に負けそうになりますが、そこをぐっとこらえて切り上げるのがこのワークの肝です。できなかった部分があっても自分を責めず、「制限時間内でこれだけできた」という「できたこと」に目を向けましょう。
ワーク3:【自分への声かけ】「よくやった、これでOK」ワーク
タスクを終えた後、あるいは切り上げた後に、完璧ではなかった部分に目が向き、自己批判の感情が湧いてきた時に行うワークです。意識的に自分を承認し、労わる言葉をかけます。
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やり方
- タスクが終了した時(設定した基準に達した時、あるいは時間切れで切り上げた時)に、一度立ち止まります。
- 作業内容を振り返り、完璧ではない部分や、もっとできたはずだと感じる部分に気づくかもしれません。その時に心の中で湧いてくる自己批判の言葉に少し耳を傾けてみます。(例:「あそこの汚れが落ちてないな」「この資料、もっと詳しく調べられたのに」「子どもにもっと優しくできたはず」)
- 批判的な声に気づいたら、次に自分自身に意識的に優しい言葉をかけます。「ここまでよくやったね」「今の状況で、できる精一杯だったよ」「完璧ではないかもしれないけれど、これで十分OKだよ」といった言葉を、心の中で、あるいは可能であれば声に出して言ってみます。
- 自分を労う気持ちを込めて、軽く肩をさすったり、深呼吸をしたりするのも効果的です。
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効果 完璧ではない自分を受け入れ、許す練習になります。自己批判のループを断ち切り、自己肯定感を育むことにつながります。タスクの完了度合いに関わらず、頑張った自分を認め、次に進むエネルギーが得られます。
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実践のポイント 最初は少し抵抗があるかもしれません。「これくらいでOKなんて、甘えなのでは?」と感じることもあるでしょう。しかし、これは決して甘やかすことではなく、自分を追い詰めすぎないためのセルフケアです。批判的な声が出てきても、「そう思ってもいいんだよ、でも、私はよくやった」と、もう一人の自分に語りかけるようなイメージで練習してみましょう。
完璧主義を手放し、「これでOK」で進む毎日へ
これらのワークは、完璧主義の思考パターンに気づき、不完全な状態でもタスクを「完了」または「中断」させる練習です。最初は慣れないかもしれませんが、意識的に繰り返すことで、少しずつ「完璧でなくても大丈夫なんだ」という感覚が心に根付いていきます。
忙しい毎日の中で全てを完璧にこなすことは不可能です。どこかで「これでOK」と線を引く勇気を持つことが、むしろ全体的なパフォーマンスを上げ、何よりもあなた自身の心と体を守ることにつながります。
タスクを切り上げた後に生まれた短い時間で、温かい飲み物を一杯飲む、少し遠くの景色を見る、深呼吸をするなど、自分を労わる時間を持つことも忘れないでください。完璧主義を手放し、「これでOK」と自分に許可を与えることで、日々の忙しさの中に、心穏やかなひとときを見つけられるはずです。
今日から、小さなタスク一つからでも良いので、「これでOK」と切り上げる練習を始めてみませんか。