「ちゃんとしなきゃ」を手放し 自分を解放するべき思考の見直しワーク
完璧主義に悩む多くの方が、「~であるべき」「ちゃんとしなきゃ」という思考に縛られ、息苦しさを感じているのではないでしょうか。仕事、家事、育児など、目の前のことを完璧にこなそうとすればするほど、心は疲弊し、時間にも追われてしまう。そして、少しでも理想通りにいかないと、自分を責めてしまう。そんな経験、あなただけではありません。
この「~であるべき」という思考は、時に私たちを奮い立たせる力にもなりますが、多くの場合、自分を追い詰める呪縛となってしまいます。まるで、自分の中に厳しい評価基準を持つもう一人の自分がいるようです。この記事では、この「べき思考」をゆるめ、もっと自分を解放するための具体的なワークをご紹介します。日常の中で無理なく取り入れられる小さなステップから始めてみましょう。
「~であるべき」思考が、私たちを疲弊させる理由
なぜ「~であるべき」という思考は、私たちを苦しめるのでしょうか。この思考の根底には、「こうしないと価値がない」「こうあるべきだ」という、自分自身や状況に対する高い、そしてしばしば非現実的な期待があります。
- 「母親は常に笑顔でいるべき」
- 「仕事はどんな時も完璧にこなすべき」
- 「家の中は常に片付いているべき」
このような「べき」は、外部からの評価や過去の経験、あるいは自分自身が作り上げた理想像に基づいていることが多いものです。しかし、現実の生活は予測不能で、常に完璧な状態を維持することは不可能です。理想と現実のギャップに直面するたび、「自分はできていない」「ダメだ」と感じ、自己肯定感が下がってしまうのです。
また、「べき思考」は私たちの視野を狭めます。「こうするべき」という一つの正解に固執するため、状況に合わせて柔軟に対応したり、他の選択肢を検討したりすることが難しくなります。結果として、不測の事態が起きたときにパニックになったり、一つ一つのタスクに過剰に時間をかけたりしてしまい、ますます時間にも心にも余裕がなくなってしまうのです。
「べき思考」をゆるめるための具体的な3つのワーク
ここでは、「~であるべき」という思考の癖に気づき、それを少しずつ手放していくための具体的なワークを3つご紹介します。どれも特別な準備は不要で、すぐにでも始められるものです。
ワーク1:あなたの「べき」を書き出してみる
まずは、自分がどんな「べき」に縛られているのかを自覚することから始めます。頭の中で漠然と考えているだけでは、その思考がどれほど自分を追い詰めているかに気づきにくいものです。
方法:
- 静かな時間を取り、ノートやメモ帳、スマートフォンのメモ機能などを用意します。
- 仕事、家事、育児、人間関係、自分自身のことなど、分野ごとに自分が普段「~であるべき」「~しなければならない」と考えていることを、思いつくままに書き出してみてください。箇条書きで構いません。
- 例:「夕食は毎日手作りであるべき」
- 例:「職場の頼みごとは断るべきではない」
- 例:「子供の勉強はしっかり見るべき」
- 例:「いつも人に優しくあるべき」
- 例:「疲れていても弱音は吐くべきではない」
- 書き出したら、それぞれの「べき」について、以下の問いを自分に投げかけてみましょう。
- 「それは本当にそうだろうか?」
- 「誰が、いつ、そう決めたのだろうか?」
- 「そうできないと、本当に困るのだろうか?」
- 「その『べき』を手放したら、何が起きるだろうか?」
効果と実践のポイント:
自分の内側にある「べき」を可視化することで、それがどれほど多く、そしてどれほど自分にとって重荷になっているかに気づけます。また、問いかけを通して、その「べき」が根拠のない思い込みや、自分以外の誰かの価値観である可能性に気づくこともあります。問いへの答えがすぐに出なくても構いません。ただ問いを立てるだけでも、その「べき」に対する見方が少しずつ変わってきます。完璧に書き出す必要はありません。思いついたものから、いくつか試してみてください。
ワーク2:「~であるべき」を「~でも良い」に言い換えてみる
書き出した「べき」思考に対して、別の、より柔軟な考え方を当てはめてみるワークです。完璧な「べき」から、許容範囲を示す「~でも良い」へと視点を移します。
方法:
- ワーク1で書き出した「べき」の中から、一つか二つ、特に自分を苦しめていると感じるものを選びます。
- 選んだ「~であるべき」という文章を、「~でも良い」「~こともある」という形に言い換えてみてください。
- 例:「夕食は毎日手作りであるべき」→「夕食は、お惣菜や外食の日があっても良い」
- 例:「職場の頼みごとは断るべきではない」→「職場の頼みごとは、自分の状況に応じて断っても良い」
- 例:「子供の勉強はしっかり見るべき」→「子供の勉強は、自分でできる範囲でサポートすれば良いこともある」
- 言い換えた文章を声に出して読んでみたり、書き出したりしてみましょう。
効果と実践のポイント:
このワークは、思考の柔軟性を養います。「こうでなければならない」という白黒思考から、「こうでも良い」「こういう選択肢もある」というグレーゾーンを受け入れる練習になります。最初は違和感や抵抗を感じるかもしれません。「でも、やっぱり~すべきだ」という反論が心の中に湧いてくることもあるでしょう。それは自然な反応です。まずは「こういう考え方もあるんだな」と、可能性として受け止めることから始めてみてください。完璧に言い換えられなくても、試みること自体に意味があります。
ワーク3:「べき」を手放し、「やりたい」「心地よい」を少しだけ優先してみる
思考を変えるだけでなく、実際の行動に小さな変化を取り入れてみるワークです。「~であるべき」という理由でやっていたことを一つだけやめてみて、代わりに自分が「やりたい」「心地よい」と感じることを少しだけ試してみます。
方法:
- 今日の予定やタスクリストを見て、自分が「~であるべきだからやっているけれど、本当は負担に感じている」ということを一つだけ見つけます。(例:「今日の夕食は子供のために栄養バランス完璧な献立にすべき」「疲れているけど、部屋を完璧に片付けてから寝るべき」など)
- その「べき」を手放し、代わりに「こうしたい」「こうしたら心地よいだろうな」ということを、少しだけ行動に移してみます。
- 例:「今日の夕食は、お惣菜を上手に活用して、その分子供とゆっくり話す時間を取ろう」
- 例:「部屋は完璧に片付けなくても良い。明日の準備だけしたら、早めに休もう」
- 「べき」を手放した結果、どんな気持ちになったかを観察してみましょう。罪悪感を感じても、それは自然な感情として受け止め、「完璧でなくても大丈夫だったな」「少し楽になったな」という小さなポジティブな変化を見つけるように意識します。
効果と実践のポイント:
このワークは、「べき思考」から来る行動パターンを変える練習になります。頭では「完璧でなくても良い」と分かっていても、実際に完璧でなくすることに強い抵抗を感じるのが完璧主義の特徴です。小さなステップで「べき」を手放す体験を積むことで、「完璧でなくても世界は終わらない」「意外と大丈夫なんだ」という成功体験(?)を積み重ねることができます。最初は罪悪感や不安を感じるかもしれませんが、自分に「今日はこれでもOK」と許可を出す練習です。無理のない範囲で、本当に小さなことから始めてみましょう。
完璧主義を手放す旅路で大切なこと
「べき思考」を手放すことは、一夜にしてできるような簡単なことではありません。長年培ってきた思考の癖を変えるには、時間と根気が必要です。ワークを実践している中で、「やっぱり自分はダメだ」「全然できていない」と感じることもあるかもしれません。そんな時、自分を責める必要はありません。
大切なのは、「完璧にやろうとしない」ことです。完璧主義を手放すワークも、完璧にこなそうとしないでください。できた日もあれば、できなかった日もあるでしょう。それも自然なことです。できなかった自分を責めるのではなく、「今日は難しかったな。また明日、できることから試してみよう」と、自分に優しく声をかけてみてください。
自分を労わり、不完全な自分を受け入れる「これでOK」という感覚を育むことこそが、完璧主義を手放す旅路において最も重要な羅針盤となります。家事が少しくらい手抜きでも、仕事で全てを抱え込まなくても、子どもの前で完璧な母親でいられなくても、あなたは十分に価値のある存在です。
まとめ:不完全な自分に「これでOK」と許可を出そう
「~であるべき」という思考を手放すことは、自分自身をがんじがらめにしていた鎖を解き放つことに繋がります。ご紹介したワークは、そのための小さな一歩です。書き出すことから、少しずつ柔軟な言葉に言い換え、そして小さな行動の変化を試してみてください。
完璧を目指すのではなく、「今の自分にできること」「今の状況で無理のないこと」を選び取る練習を重ねることで、心にゆとりが生まれ、日々の生活がもっと楽に、もっと穏やかになっていくのを感じられるでしょう。
あなたには、完璧でなくても、十分に素晴らしい価値があります。「これでOK」と自分に許可を出し、心を軽くして、自分らしい毎日を送ってください。