家事・育児の「見えない頑張り」を認める。「これでOK」基準の作り方
はじめに
仕事、家事、育児。毎日たくさんの役割をこなし、休む間もなく頑張っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。特に家事や育児は、終わりが見えにくく、「これだけやれば十分」という明確な基準がないために、つい完璧を目指してしまい、気づけば心身ともに疲弊していることがあります。
誰かに褒められるわけでもなく、「やって当たり前」と思われがちな家事や育児の中には、「見えない頑張り」がたくさん隠れています。この「見えない頑張り」は、完璧主義の傾向があると、自分自身でさえその努力を正当に認められず、さらに自分を追い詰める原因となることがあります。
この記事では、そうした家事や育児における「見えない頑張り」を認識し、自分を認め、「これでOK」と思える基準を持つための具体的なワークをご紹介します。頑張りすぎから一歩離れ、心穏やかな日常を送るための一助となれば幸いです。
なぜ「見えない頑張り」は私たちを疲れさせるのか
家事や育児のタスクは多岐にわたり、毎日の食事作り、掃除、洗濯、子供の送迎、宿題の手伝い、体調管理など、枚挙にいとまがありません。これらの多くは、仕事のように定時で終わるわけでもなく、成果が数値化されることも少ない性質を持っています。
また、「母親ならこれくらいできて当然」「主婦として完璧でなければ」といった、内なる声や社会的な期待が、無意識のうちに私たちにプレッシャーを与えています。SNSなどで目にする理想的な暮らしぶりも、時に「自分はまだまだだ」と感じさせてしまう原因になるかもしれません。
こうした環境の中で、私たちは自分自身の「見えない頑張り」に気づきにくくなり、たとえ十分な努力をしていても、自分を認めることが難しくなります。そして、「もっとできるはず」「完璧にやらなければ」という思いが、さらなる疲労へとつながっていくのです。
ワーク:見えない頑張りを「できたこと」に変え、「これでOK」基準を作る
ここでは、あなたの日常に潜む「見えない頑張り」を認識し、自分を認め、無理のない「これでOK」基準を作るための3つのステップワークをご紹介します。特別な時間は必要ありません。日々の生活の中で、少しだけ意識を変えて取り組んでみてください。
ワーク1:頑張りの「見える化」リストを作る
- 目的: 普段無意識に行っている家事や育児のタスクを意識に上げ、自分の努力を具体的に認識することです。
- 方法: ノートやスマートフォンのメモ機能などに、普段行っている家事や育児のタスクを思いつくままに書き出してみてください。
- 例:
- 朝食を作る
- 子供を起こす、着替えさせる
- 保育園・学校の準備をする
- ゴミを分別する
- 洗濯機を回す
- 洗濯物を干す
- 夕食の献立を考える
- 子供の話を聞く
- 翌日の持ち物を確認する
- 戸締りを確認する
- 例:
- ポイント: どんなに小さなこと、「やって当たり前」と思っていることでも構いません。「歯磨きをさせる」「忘れ物がないか声をかける」といった細かなタスクも書き出すことで、あなたの頑張りの全体像が見えてきます。リスト作成に時間をかけすぎず、まずは5分でも10分でも、思いつくままに書き出してみましょう。
ワーク2:毎日の「できたこと」に印をつける
- 目的: 完了したタスクに意識を向け、自分自身の頑張りを日々認める練習をすることです。
- 方法: ワーク1で作ったリストをコピーするか、毎日見られる場所に置き、1日の終わりに「今日できたこと」にチェックやマーカーなどで印をつけてみてください。
- ポイント: ここでのポイントは、「完璧にできたか」ではなく、「やったか」で判断することです。例えば、「今日の夕食は手抜きだったけど、作った」ならOK。「掃除機は全部屋かけられなかったけど、リビングだけはかけた」でもOKです。できなかったこと、やり残したことに焦点を当てるのではなく、今日できたことだけに意識を向けてください。毎日続けることで、あなたがどれだけ多くのことをこなしているかを実感できます。
ワーク3:「これくらいでOK」基準を決めて共有する
- 目的: 完璧を目指す思考パターンを手放し、無理なく継続できる基準を設定すること、そして可能であれば家族の協力を促すことです。
- 方法: ワーク1のリストを見ながら、それぞれのタスクについて「これくらいなら、心穏やかに続けられるかな」「どうしても疲れているときは、ここまでできれば十分」という「これでOK」基準を具体的に決めてみてください。
- 例:
- 夕食は週に2回は簡単な一品でもOK
- 掃除は週末にまとめてではなく、平日は気になった場所だけ軽く
- 洗濯物は畳むのが面倒なら、ハンガーのまましまう
- 子供の身支度は、声かけはするけど最終チェックは本人に任せる
- 例:
- 作ったリストや「これでOK」基準を、家族にも見てもらい、共有してみるのも良いでしょう。「これだけたくさんのことを毎日やっているんだよ」「これからは、この基準でやっていきたいんだ」と伝えることで、あなたの頑張りが家族にも伝わりやすくなり、協力を得やすくなる可能性があります。
- ポイント: この基準は、サボるための言い訳ではありません。あなたが心身ともに健康で、家族との時間を大切にしながら、無理なく日々を続けられるようにするための知恵です。最初から全てのタスクについて基準を決めようとせず、負担に感じているタスクからいくつか試してみてください。家族の反応が期待通りでなくても落ち込まず、まずは自分自身が「これでOK」と認めることから始めましょう。
ワークを続けるためのヒント
これらのワークは、一度やれば終わりというものではありません。日々の変化に合わせて、基準を見直したり、リストを更新したりしながら、続けていくことが大切です。
- 完璧にやろうとしない: ワーク自体も完璧にこなす必要はありません。忙しい日はリストを見るだけでも、一つだけ印をつけるだけでも十分です。
- 疲れたら休むサインと捉える: ワークに取り組む気力も湧かないほど疲れているときは、それは体が休息を求めているサインかもしれません。無理せず、まずは体を休めることを優先してください。
- 自分を責めない練習: ワークができなかった日や、「これでOK」基準を守れなかった日があっても、自分を責めないでください。「今日は難しかったな」「また明日からやってみよう」と、自分に優しく語りかける練習をしましょう。
おわりに
家事や育児における「見えない頑張り」を認識し、自分自身でその努力を認めることは、完璧主義を手放す上で非常に重要なステップです。そして、「これでOK」と思える無理のない基準を持つことは、自己肯定感を高め、心穏やかな日常を築くための力となります。
完璧を目指すことの辛さから解放され、自分の頑張りを正当に認め、自分自身を労わる時間を少しでも持てるようになることを願っています。「これでOK」という言葉は、手抜きを奨励する言葉ではなく、あなたがあなたらしく、無理なく輝き続けるための温かいエールなのです。