「完璧な母親」「完璧な妻」を手放す。「私らしいOK」を見つける役割別ワーク
日々、仕事に家事に育児に、本当にたくさんの役割をこなしていらっしゃることと思います。
それぞれの役割で「ちゃんと」「完璧に」と頑張るあまり、心も体も疲れてしまうことはありませんか。理想の母親像、理想の妻像、理想の働く女性像...。様々な「こうあるべき」イメージに追われ、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
でも、すべての役割で完璧を目指すことは、現実的ではありませんし、何よりあなた自身をすり減らしてしまいます。大切なのは、「完璧な役割」を演じることではなく、それぞれの役割の中で「私らしいこれでOK」を見つけ、心穏やかに過ごすことではないでしょうか。
この記事では、複数の役割を抱えるあなたが、それぞれの場面で「完璧」を手放し、「私らしいOK」を見つけるための具体的な思考法とワークをご紹介します。
なぜ「完璧な役割」を目指すと疲れてしまうのか
私たちは、社会やメディア、あるいは自分自身の内なる声によって、様々な役割における「理想像」を知らず知らずのうちに内面化しています。「母親ならこうあるべき」「妻ならこうあるべき」「仕事ができる人ならこうあるべき」...。
これらの理想像は、往々にして現実離れしているか、少なくとも一人の人間がすべてを同時に完璧にこなすのは非常に難しいものです。それなのに、私たちはその理想とのギャップに苦しみ、「自分はできていない」と自己否定に陥ってしまいます。
特に、仕事、家事、育児と複数の役割を並行して担っていると、限られた時間の中でそれぞれの「完璧」を目指すことになり、慢性的な時間不足と疲弊を招きます。すべてを一人で抱え込もうとすると、心身の健康を損なうことにも繋がりかねません。
だからこそ、「完璧な役割」を手放し、「私らしいOK」を見つけることが、心穏やかに日常を送るための重要な鍵となります。
役割別の「私らしいOK」を見つけるワーク
ここからは、それぞれの役割において「完璧」を手放し、「これでOK」を見つけるための具体的なワークをご紹介します。すぐに試せる小さなステップから始めてみましょう。
ワーク1:母親としての「今日の小さなOK」を見つける
子育てには予期せぬ出来事がつきもので、計画通りにいかないことの方が多いかもしれません。そんな中でも、「完璧な母親」ではなく「私らしいOKな母親」を見つけるためのワークです。
方法
- 夜、お子さんが寝静まった後や、少し落ち着ける時間に、ノートやメモ帳を用意します。
- 今日一日を振り返り、「母親として、完璧にはできなかったけれど、これならOK」と思えることを3つ書き出します。
- 例:「ご飯は手抜きになったけれど、子供が笑顔になった瞬間があった」
- 例:「公園には行けなかったけれど、家で絵本を一緒に読めた」
- 例:「怒ってしまったけれど、その後仲直りできた」
- 次に、「完璧を目指したけれど、今日はあえて諦めたこと」を一つ書き出します。
- 例:「子供が散らかしたおもちゃを全部片付けるのはやめた」
- 例:「寝かしつけがうまくいかず、自分の時間を作るのは諦めた」
- 最後に、書き出した「小さなOK」を声に出して読み上げ、「今日の私、これでOK」と自分に語りかけます。
効果
できなかったことではなく、できたこと、OKだったことに意識を向ける練習になります。完璧でなくても、お子さんとの関わりの中で大切にできた瞬間があることに気づき、自分を肯定的に捉える助けとなります。また、あえて諦めることを意識することで、完璧主義を手放す練習にもなります。
実践のポイント
最初は「こんな小さなこと?」と思うかもしれません。それでも大丈夫です。どんなに小さなことでも、「できたこと」「OKだったこと」として拾い上げることが大切です。毎日続ける必要はありません。疲れたなと感じた日や、自己嫌悪に陥りそうな日に試してみてください。
ワーク2:妻としての「頼り上手」リストアップ
家庭生活は夫婦で協力し合うことで、一人で抱え込むよりもずっと楽になります。「完璧な妻」としてすべてを自分でこなすのではなく、パートナーと「これでOKな分担」を見つけるワークです。
方法
- 家事や家庭内のタスクをリストアップしてみます。(例:夕食作り、洗濯、ゴミ出し、子供の習い事の送迎、学校からのプリント確認、トイレットペーパーの補充、など)
- そのリストを見て、「完璧には自分でできない」「任せた方が効率が良いかもしれない」「本当は手伝ってほしい」と思うタスクに〇をつけます。
- 〇をつけたタスクの中から、一つか二つ、具体的な内容を決めて、「パートナーに手伝ってほしいこと」「パートナーに任せたいこと」として書き出します。
- 例:「週末のゴミ出しをお願いしたい」
- 例:「子供の歯磨きの仕上げ磨きを任せたい」
- 例:「重いものの買い物をお願いしたい」
- パートナーに、これらのリストを「お願いベース」で伝えてみましょう。「これ、お願いできるかな?」「これ、あなたに任せてもいいかな?」というように、柔らかい言葉で伝えます。
効果
一人で「完璧にやらねば」と抱え込んでいたタスクを客観的に見つめ直し、手放すきっかけになります。パートナーとの協力を得ることで、物理的な負担が減るだけでなく、「完璧な妻」である必要はないという心の負担も和らぎます。夫婦間のコミュニケーションを深める機会にもなります。
実践のポイント
一度にすべてを任せようとせず、小さなことから始めるのがおすすめです。パートナーも完璧ではないので、「頼んだけれどうまくいかなかった」ということもあるかもしれません。そんな時も、「まあ、これもOK」と大目に見る柔軟な姿勢が大切です。感謝の気持ちを伝えることも忘れずに。
ワーク3:働く自分としての「ここまでOK」ライン設定
仕事においても、完璧主義はタスクの完了を遅らせたり、過剰な時間を使ったりすることに繋がりがちです。忙しい中で「これでOK」と仕事を終えるためのワークです。
方法
- 今日取り組むタスクの中から、一つを選びます。
- そのタスクについて、「これは必須」という最低限の完了レベル(合格ライン)を決めます。
- 例:資料作成タスクの場合「必要な情報がすべて網羅されていること」
- 次に、「ここまでやれば今日の私としてはOK」という完了レベルを設定します。これは、必須レベルよりも少し上だけど、完璧ではないレベルです。
- 例:資料作成タスクの場合「情報網羅に加え、誤字脱字のチェックを終え、グラフを1つ挿入した状態」
- タスクに取り組み、「ここまでやればOK」と設定したレベルに達したら、それ以上時間をかけずにタスク完了とします。もし可能であれば、「理想はここまで」というレベルも考えておくと、OKラインが明確になります。
- 例:「理想は、デザインを凝り、アニメーションもつけること」
- 設定した「ここまでOK」ラインで終えられた自分を認め、「よし、これでOK」と心の中で唱えます。
効果
「完璧」を目指すのではなく、「OK」な状態を目指すことで、タスクを効率的に完了させる練習になります。時間内にタスクを終える達成感が得られ、自己肯定感の向上に繋がります。過剰な準備や修正を手放し、本当に重要なことに集中できるようになります。
実践のポイント
最初は「本当にこれで大丈夫かな?」と不安になるかもしれません。でも、まずは簡単なタスクから試してみてください。徐々に「OK」ラインの精度を上げていくことができます。周囲の評価が気になる場合は、まずは自分の中で「これでOK」と納得できる基準を見つけることに焦点を当てましょう。
ワーク4:自分自身としての「ご自愛のOK」を見つける
仕事や家庭の役割だけでなく、自分自身を労わる時間を持つことも「これでOK」な日常には不可欠です。「完璧な誰か」を目指すのではなく、「心地よい自分」でいるためのワークです。
方法
- 「自分が本当に心地よいと感じること」「これをする時間があると心が満たされること」をいくつかリストアップします。(例:好きな音楽を聴く、コーヒーをゆっくり飲む、本を読む、好きな香りの入浴剤を使う、軽いストレッチをする、ただ座ってボーっとする、など)
- リストの中から、今の自分の状況で「無理なくできそうなこと」を一つか二つ選びます。時間は5分や10分でも構いません。
- 選んだことを「今日の私のご自愛OKリスト」として書き出します。
- 一日の中で、リストに書いたことを実行する時間を意識して作ります。(例:子供が昼寝している間に5分だけコーヒーを飲む、通勤中に好きな音楽を聴く、など)
- 実行できたら、「今日の私、ご自愛できた。これでOK」と自分を褒めてあげます。
効果
自分自身を労わる時間を持つことで、心身のリフレッシュに繋がります。仕事や家庭の役割から離れ、「自分」として存在する時間を持つことで、自己肯定感が高まります。「完璧な誰か」ではなく「心地よい自分」でいることが、何よりも大切だと気づく助けになります。
実践のポイント
「ご自愛の時間なんてない」と思うかもしれません。でも、ほんの数分でも良いのです。完璧に長時間確保できなくても、「今日はこれだけできた」と肯定的に捉えることが大切です。罪悪感を感じる必要はありません。自分を労わることは、あなた自身だけでなく、周囲にとっても良い影響をもたらします。
完璧主義を手放す旅は「完璧でなくてOK」
これらのワークを試してみて、もし「うまくできなかった」「完璧にリストアップできなかった」と感じても、それで良いのです。完璧主義を手放す旅自体も、「完璧に手放す」必要はありません。
大切なのは、それぞれの役割の中で「完璧」を目指すことの辛さに気づき、少しずつ「私らしいOK」の基準を探していくことです。小さな一歩を踏み出し、時には立ち止まり、また歩き出す。そのプロセスすべてが「これでOK」なのです。
自分自身に優しく、ねぎらいの言葉をかけてあげてください。あなたは、たくさんの役割を一生懸命にこなしています。その存在自体が素晴らしいのです。「完璧」を手放し、「私らしいOK」で、あなたの毎日がもっと心穏やかになることを願っています。