完璧主義の「白黒思考」をゆるめる。日常に「これでOK」のグレーゾーンを作るワーク
完璧主義なあなたは、物事を「0か100か」「すべてか無か」で捉えてしまうことはありませんか。少しでも完璧でないと、「もう全部ダメだ」と感じてしまう。
これは完璧主義の方が陥りやすい「白黒思考」と呼ばれる考え方の癖です。この思考パターンは、特に忙しい毎日の中で、あなたをさらに追い詰めてしまうことがあります。
家事や育児、仕事で、思うように時間が使えなかったり、予期せぬ出来事が起きたりすると、「完璧にできなかった自分は失格だ」と自己嫌悪に陥ってしまいがちです。すべてを完璧にこなそうとするからこそ、少しのズレも許容できず、疲弊が増してしまうのです。
でも、本当に世の中の全てが「白」か「黒」のどちらかしかないのでしょうか。多くのことは、その中間にある「グレー」で成り立っています。そして、その「グレーゾーン」の中にこそ、「これでOK」という心穏やかな状態を見つけるヒントがあります。
この記事では、完璧主義が生み出す「白黒思考」をゆるめ、日常に「ちょうどいいグレーゾーン」を取り入れるための具体的なワークをご紹介します。無理なく試せる小さな一歩から始めてみましょう。
完璧主義が生み出す「白黒思考」とは
白黒思考とは、物事の評価や自分の状態を、両極端な二つのカテゴリーでしか捉えられない考え方の癖です。例えば、
- 家事が完璧に終わらなかったら → 完全にダメな母親/妻だ
- 仕事で小さなミスをしたら → 自分は全く能力がない
- 子どもが言うことを聞かない時があったら → 自分は子育てが全くできていない
このように、「できたか/できなかったか」「成功か/失敗か」「良いか/悪いか」といった二元論で自分や状況を評価しがちです。
この思考の何が辛いかというと、完璧な「白」は現実にはほとんど存在しないため、常に「黒」の側にいるように感じてしまい、自己肯定感が下がり、強いストレスや自己嫌悪につながる点です。少しでも「黒」の要素があると、全体が「真っ黒」に見えてしまうのです。
白黒思考をゆるめ、「グレーゾーン」を許容するための考え方
白黒思考を手放し、日常にグレーゾーンを意識的に取り入れるためには、まず「完璧でない中間」にも価値があることを認識する必要があります。
- グラデーションの存在を意識する: 物事には「完璧」と「ゼロ」の間に、無数の段階や状態があることを認めます。
- 「機能していればOK」の視点を持つ: 例えば、部屋が完璧に片付いていなくても、生活に支障がないレベルであれば「これでOK」とすることができます。食事も、手作りでなくても栄養バランスが取れていれば「OK」です。
- 「少しでも進めばOK」と捉える: タスクが完全に終わらなくても、一部でも取り組めたらそれは立派な一歩です。ゼロでなかったことに目を向けます。
これらの考え方を踏まえて、具体的なワークに取り組んでみましょう。
日常に「ちょうどいいグレー」を見つけるワーク
ワーク1:タスクの「OKレベル」を段階で設定する
一つのタスクに対して、「完璧な状態」だけでなく、「最低限OKな状態」「まあまあOKな状態」など、複数の「OKレベル」を設定してみましょう。
実践方法:
- 普段「完璧にやらなければ」と思っている家事や仕事のタスクを一つ選びます。(例: 部屋の片付け、メールの返信、今日の夕食作り)
- そのタスクの「完璧な状態」をイメージします。
-
次に、「最低限これだけやればOK」「これくらいできればまあまあOK」というレベルを具体的に設定します。可能であれば、3〜5段階くらい考えてみましょう。
- 例: リビングの片付け
- レベル5(完璧):全ての物が元の位置に片付き、床や家具に埃がない状態。
- レベル4(かなりOK):散らかっている物がなくなり、棚の上なども整頓されている状態。
- レベル3(まあまあOK):床に物がなくなり、テーブルの上など目につくところが片付いている状態。
- レベル2(最低限OK):通路が確保され、人が通るのに邪魔な物がない状態。
- レベル1(生存レベル):とりあえず最低限の生活スペースは確保されている状態。
- その日の自分の時間や体調、他のタスクとの兼ね合いを見て、「今日はレベル〇でOKとする」とあらかじめ宣言したり、タスク完了後に「今日はレベル〇までできた」と自分に許可を与えたりします。
- 例: リビングの片付け
ポイント:
- 紙に書き出したり、スマホのリマインダーに登録したりすると、視覚的に認識しやすくなります。
- 設定したレベルを達成できたら、完璧でなくても「できた」としっかり認めましょう。
ワーク2:自分の「白黒ワード」に気づく
私たちは思考する際に、特定の言葉を使う傾向があります。完璧主義の人は、「絶対に」「常に」「決して〜ない」「〜すべき」「〜ねばならない」といった、極端な白黒思考を示唆する言葉を使いやすい傾向があります。
実践方法:
- 1日の終わりに、その日自分が考えたり、口にしたりしたことを少し振り返ってみます。
- その中に、「絶対に」「完全に」「常に」「決して〜ない」「〜すべき」「〜ねばならない」「全部ダメだ」「全然できていない」といった白黒思考につながるような言葉が含まれていなかったか注意してみましょう。
- もし見つけたら、「あ、今、白黒思考の言葉を使ったな」と、ただ気づくだけで構いません。その考えが良いか悪いか判断する必要はありません。
ポイント:
- すぐに言葉遣いは変わらなくても大丈夫です。まずは「気づく」ことが最初の一歩です。
- 慣れてきたら、その言葉を使った考えが本当に正しいのか、「別の見方はないかな?」と少し立ち止まって考えてみる練習をしてみましょう。
ワーク3:小さな「グレーOK」を見つけて言葉にする
完全に満足のいく結果ではなかったとしても、その中に含まれる「できたこと」「良かったこと」「少しでも進んだこと」といった「グレーだけどOKな部分」に意識的に焦点を当ててみましょう。
実践方法:
- 何かを終えた後や、1日の終わりに、完璧にできなかったと感じるタスクや出来事を一つ思い浮かべます。(例: 今日の夕食が手抜きだった、子どもを怒ってしまった、仕事で締切ギリギリになった)
- 「全くダメだった」という白黒思考が浮かんでくるかもしれませんが、そこで立ち止まります。
-
次に、「でも、この部分だけはできた」「完全にではないけれど、ここまでは進んだ」「完璧ではなかったけど、こういう側面は良かった」という「グレーOKな部分」を探します。
- 例: 夕食が手抜きだった
- 白黒思考:「全然手作りしてない、ダメだ」
- グレーOK:「手作りはできなかったけど、栄養バランスは考えた」「冷凍食品を使ったけど、洗い物が楽になってその分休めた」「子どもは美味しいと言ってくれた」
- 例: 子どもを怒ってしまった
- 白黒思考:「カッとなってしまった、完璧な母親じゃない」
- グレーOK:「怒ってしまったけど、後で謝ることができた」「次の日には気持ちを切り替えることができた」「自分も疲れていたことに気づけた」
- 見つけた「グレーOK」を、心の中で唱えたり、ノートに書き出したりします。声に出して自分に聞かせると、より効果的です。
- 例: 夕食が手抜きだった
ポイント:
- どんな小さなことでも構いません。「朝起きられた」「ご飯を食べた」など、当たり前と思っていることも「グレーOK」の一部です。
- ネガティブな評価が頭に浮かんだら、「待って、でも〜はできた」と肯定的な側面を探す癖をつけましょう。
実践を続けるためのヒント
これらのワークは、すぐに完璧な「グレー思考」になれる魔法ではありません。これまで慣れ親しんだ白黒思考は、そう簡単には手放せないものです。
- 「完璧にやろうとしない」: ワーク自体を「完璧にこなさなければ意味がない」と思わないことが大切です。これもまた白黒思考になってしまいます。できた時に試す、気が向いた時にやってみる、くらいの軽い気持ちで大丈夫です。
- 自分を責めない: ワークがうまくできなかったり、また白黒思考に陥ってしまったりしても、自分を責めないでください。「あ、また白黒で考えちゃったな」と気づけたこと自体を褒めてあげましょう。
- 休息も「グレー」で: 休息や自分の時間も、完璧にリラックスできる必要はありません。少しでも静かな時間を持てた、数分でも横になれた、など、完璧でない休息も「グレーOK」と認めてあげましょう。
まとめ:グレーゾーンがくれる心のゆとり
完璧主義の「白黒思考」をゆるめ、日常に「グレーゾーン」を意識的に取り入れることは、自分を追い詰めることを減らし、心にゆとりをもたらすための大切なステップです。
完璧を目指すのではなく、「今の自分にできる範囲で、これでOK」というグレーな状態を許容できるようになると、自己嫌悪に陥る回数が減り、自分自身にも、周囲にも優しくなれるのを感じられるでしょう。
今日のあなたができる「ちょうどいいグレー」は、昨日や明日とは違うかもしれません。その日その時の自分を受け入れ、「このレベルで大丈夫」と許可を出す練習を続けてみてください。完璧でなくても、あなたの毎日は十分に価値があり、あなたの頑張りは「これでOK」なのです。