完璧主義さんが『もういいかな』と手放す練習。心と時間にゆとりを生む「自分基準」の終了ワーク
完璧主義なあなたは、日々の仕事や家事、育児において、「もっとできるはず」「まだ完璧じゃない」と感じて、終わりが見えなくなり疲れてしまうことはありませんか。限られた時間の中で、すべてを完璧にこなそうとすればするほど、時間にも心にも余裕がなくなり、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
やらなければならないことはたくさんあるのに、一つ一つに時間をかけすぎてしまい、「これも」「あれも」と手を広げているうちに、結局何もかもが中途半端に感じられたり、締め切りや時間切れでバタバタと終えたり。そして、終わらなかった部分にばかり目がいき、自己嫌悪に陥ってしまう。そんな経験は、完璧主義の方にはきっと少なくないはずです。
この記事では、そんな「終われない」悩みを手放し、心と時間にゆとりを生むための具体的なワークをご紹介します。完璧を目指すのではなく、「これでOK」と自分なりの終了基準を持ち、たとえ完璧でなくても自分を労わる練習をしてみましょう。
なぜ完璧主義だと「終わり」が見えにくいのか
完璧主義の方にとって、「終わり」や「完了」は、「すべてが理想通りに仕上がった状態」を意味することが多いかもしれません。しかし、現実の世界では、時間や資源には限りがあり、理想通りにすべてを整えることは不可能です。常に「もっと良くできる余地」が見えてしまうため、いつまでたっても終わりが見えず、常に未完了感や不十分さを感じてしまうのです。
また、「終わらせる」ことは、「不完全な状態で手放すこと」のように感じられ、それがまるで「失敗」であるかのように捉えてしまうこともあります。そのため、無意識のうちに作業を引き延ばしたり、最後の細かい部分にこだわりすぎたりして、結果的に時間だけが過ぎていくという状況が生まれます。
「これでOK」の終了基準を持つことの重要性
完璧を目指すのではなく、「これでOK」という自分なりの終了基準を持つことは、限られた時間の中で効率的にタスクを完了させ、心にゆとりを生むために非常に重要です。終了基準を持つことで、以下のメリットが得られます。
- 時間の有効活用: 無限に時間をかけるのではなく、決められた時間や基準で終える意識が生まれ、他のタスクに時間を使えるようになります。
- 精神的な負担の軽減: 「終わらない」ことへの焦りや、すべてを完璧にしなければというプレッシャーが和らぎます。
- 達成感の積み重ね: 「終わった」という感覚を積み重ねることで、自己肯定感が高まります。
- 心のゆとり: 作業から離れる時間を作ることで、リフレッシュでき、結果的に次の作業への集中力も増します。
では、具体的にどのようにして「自分基準」の終了ラインを設定し、「もういいかな」と手放す練習をすれば良いのでしょうか。いくつかのワークをご紹介します。
ワーク1:自分基準の終了ライン設定
このワークでは、日頃行っているタスクに対して、「ここまでやればOK」という自分なりのラインを設定する練習をします。完璧な状態ではなく、「目的を達成するために最低限必要な状態」や「限られた時間で可能な範囲」を基準とします。
やり方
- タスクのリストアップ: 最近、「終わりが見えなかった」「時間ばかりかかってしまった」と感じるタスクをいくつか書き出してみましょう。
- 例:夕食作り、部屋の片付け、仕事の資料作成、子供の宿題チェック、今日のToDoリスト消化など。
- 目的の再確認: それぞれのタスクの「本来の目的」は何だったかを考えてみましょう。
- 例:夕食作り → 家族が栄養を摂り、一緒に食卓を囲むこと。部屋の片付け → 家族が安全かつ快適に過ごせること。仕事の資料作成 → 情報を共有し、次のステップに進むこと。
- 完璧にすること自体が目的になっていないか、確認します。
- 「これでOK」ラインの設定: そのタスクについて、「本来の目的が達成できるなら、ここまででOK」というラインを具体的に決めます。時間や、作業量などで設定してみましょう。
- 例:
- 夕食作り:「3品でOK」「調理時間45分でOK」
- 部屋の片付け:「テーブルの上だけ片付ければOK」「リビングだけ掃除機をかければOK」
- 仕事の資料作成:「主要な情報が入っていれば、デザインは後で整えればOK」「まずは草稿を提出してOK」
- 子供の宿題チェック:「丸つけは親、見直しは本人と分担してOK」「全部ではなく、今日の学習範囲だけチェックしてOK」
- 今日のToDoリスト消化:「緊急度・重要度の高い3つができればOK」
- 例:
- 見える化: 設定した「これでOK」ラインをメモなどに書き出し、タスクに取り組む際に意識できるようにしておきましょう。
このワークは、タスクに取りかかる前に「どこまでやったら終わりにするか」を意識的に決めることがポイントです。完璧を目指すのではなく、現実的なラインを設定することが大切です。
ワーク2:「もういいかな」と手放す練習
ワーク1で設定した「これでOK」ラインを目安に、実際に作業を切り上げる練習をします。最初は抵抗があるかもしれませんが、意識的に「終える」ことを体験することが重要です。
やり方
- 終了ラインを意識して取り組む: 設定した「これでOK」ラインや時間制限を意識しながらタスクに取り組みます。
- 意図的に作業を止める: 終了ラインに達したら、たとえ「もっとできる」と感じても、そこで作業をストップします。時間制限を設けた場合は、タイマーが鳴ったら中断します。
- 「もういいかな」と声かけする: 作業を終えたら、心の中で、あるいは実際に声に出して「よし、これでOK」「今日はここまでで十分」「もういいかな」と自分に語りかけてみましょう。
- できた部分に目を向ける: 終えられなかった部分や気になるところではなく、「ここまでできた」「○○は完了した」という、できた部分に意識を向けます。小さなことでも構いません。「夕食、とりあえずできた!」「リビング、きれいになった部分がある」「資料、必要な情報は盛り込めた」など、達成した点を確認します。
最初は「本当にこれで大丈夫かな」「手を抜いているんじゃないか」といった不安や罪悪感を感じるかもしれません。それでも、「設定した基準で終える」ことを練習することが大切です。回数を重ねるうちに、「これで意外と大丈夫だった」という経験が積み重なり、「もういいかな」と手放すことへの抵抗が和らいでいくでしょう。
ワーク3:終えられなかった自分を労わる
「もういいかな」と手放しても、どうしても「あそこが気になってしまう」「完璧にできなかった自分はダメだ」と自己嫌悪に陥ってしまうことがあります。そんな時に、自分を責めるのではなく、優しく労わる練習をしましょう。
やり方
- 罪悪感や自己否定の感情に気づく: 作業を終えた後に、「不十分だ」「もっとできたはず」といったネガティブな感情が湧いてきたら、まずはその感情に気づき、「あ、今、自分を責めているな」と客観的に認識します。
- 自分への優しい声かけ: 心の中で、あるいは声に出して、自分に優しい言葉をかけてみましょう。まるで大切な友人や子供に語りかけるように。
- 例:「今日は本当によく頑張ったね。疲れたでしょう。」
- 「時間がない中で、ここまでできたことだけでも素晴らしいよ。」
- 「完璧じゃなくても大丈夫。頑張ったプロセスが大切だよ。」
- 「終わらなかった部分があっても、それはあなたが一生懸命取り組んだ証拠だよ。」
- 終えられなかったことによるメリットを見つける: たとえ完璧に終えられなくても、そのおかげで何か別の良いことがあったかもしれません。意識的に良い点を探してみましょう。
- 例:「掃除を早く切り上げたおかげで、子供と遊ぶ時間ができた。」
- 「仕事の資料作成を切り上げて提出したから、次のタスクに取りかかれた。」
- 「早く寝られたから、明日の体調が良いかもしれない。」
- 自分に小さなご褒美をあげる: 完璧に終えられなくても、「今日、頑張ってタスクに取り組んだ自分」に対して、小さなご褒美をあげてみましょう。好きな飲み物を飲む、短い休憩をとる、好きな音楽を聴くなど、心安らぐ時間を持つことが、自分を労わることにつながります。
このワークは、「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」の考え方に基づいています。完璧にできない自分を受け入れ、優しく接することで、自己肯定感を育み、完璧主義からくる自己嫌悪感を和らげることができます。
実践する上でのヒントと継続の工夫
これらのワークは、一度やればすぐに完璧主義がなくなるというものではありません。少しずつ、日々の生活の中で練習を続けていくことが大切です。
- 小さなタスクから始める: 最初は、心理的なハードルが低い簡単なタスクで「これでOK」ラインを設定し、意図的に切り上げる練習をしてみましょう。成功体験を積み重ねることが自信につながります。
- 完璧にできなくても大丈夫: 「ワークを完璧にこなさなきゃ」と思わないでください。うまく「もういいかな」と手放せなかった日があっても、自分を責める必要はありません。「今日は難しかったな」と受け止め、また次の機会に試せば良いのです。
- 記録をつける: どんなタスクで、どんな「これでOK」ラインを設定したか、実際にどう終えたか、その時の気持ちなどを簡単に記録しておくと、自分の傾向を把握したり、変化に気づいたりするのに役立ちます。
- 目標を人に話してみる: 「このタスクはここまでで終えるようにする」という目標を家族や職場の信頼できる人に話してみるのも良いでしょう。適度なプレッシャーが後押しになることもあります。
- 自分を許す練習とセットで: 終了基準で終えられなかったり、終えた後に罪悪感を感じたりしても、「完璧にできない自分もOK」と許す練習(ワーク3)を必ずセットで行いましょう。
まとめ
完璧主義を手放し、「もういいかな」と自分基準でタスクを終えることは、決して手を抜くことや諦めることではありません。それは、限られた時間の中で、自分にとって本当に大切なこと(家族との時間、休息、他の優先事項など)に時間とエネルギーを使うための賢明な選択です。
完璧を目指すのではなく、「これでOK」という自分なりの納得できるラインを見つけ、意図的に終える練習をすることで、日々のタスクに対する捉え方が変わり、心にゆとりが生まれていきます。そして、たとえ完璧にできなくても、頑張った自分自身を労わることを忘れないでください。
「これでOK」ワークショップは、完璧主義に悩むあなたが、少しでも肩の荷を下ろし、心穏やかに日々を過ごせるようになるための具体的なヒントを提供しています。この記事で紹介したワークが、あなたの日常に小さな変化をもたらすきっかけとなれば幸いです。