「まだ頑張れる」を手放す練習。完璧主義さんが心身のサインに気づき自分を労わるワーク
完璧主義と「疲労の見落とし」
忙しい毎日、仕事も家事も育児も、すべてをきちんとこなそうと頑張っていらっしゃるかもしれません。ついつい「まだ大丈夫」「もっと頑張れるはず」と自分を追い込んでしまい、気づけば心も体もいっぱいいっぱいになってしまうことはないでしょうか。
完璧主義な方は、目標達成や基準を満たすことに意識が向きやすく、自分の内側、特に心や体が発する「疲れた」のサインを見落としてしまう傾向があります。無理をすること、我慢することが「正しいこと」「素晴らしいこと」のように感じられ、自分の休息やケアを後回しにしてしまいがちです。
しかし、心身のサインを無視し続けると、パフォーマンスが落ちるだけでなく、体調を崩したり、心に不調をきたしたりする可能性があります。自分を大切にすることは、決して甘えではありません。むしろ、長く健やかに頑張り続けるために、そして穏やかな日常を送るために不可欠なことです。
ここでは、完璧主義さんが見落としがちな心と体のサインに気づき、自分を労わるための具体的なワークをいくつかご紹介します。特別な時間は必要ありません。忙しい日常の合間に、数分、数秒でもできる簡単なワークです。
体のサインに気づく「ミニ・ボディスキャン」ワーク
「ボディスキャン」とは、体の一部ずつに意識を向け、そこにどんな感覚があるかを丁寧に感じていく瞑想的な技法です。本格的なボディスキャンは時間がかかりますが、ここでは日常で取り入れやすい「ミニ・ボディスキャン」をご紹介します。
目的 完璧を目指す思考から離れ、「今、ここ」の体自身の状態に意識を向ける練習をします。体の感覚に気づくことで、疲労や緊張のサインに気づきやすくなります。
やり方 1. 仕事の合間、家事の途中、電車での移動中など、どこでも好きな時に行います。椅子に座っていても、立っていても構いません。 2. 一度、軽く目を閉じるか、視線を落とします。(難しければ目を開けたままでも大丈夫です) 3. 数回、ゆっくりと呼吸をします。吸う息、吐く息の感覚に意識を向けます。 4. 次に、体の各部分に意識を向けていきます。例えば、 * 肩や首周りに力が入っていないか * 顔の表情は強張っていないか * 手のひらはどんな感覚か * 足の裏は地面についている感覚があるか * 体に重だるさはないか * どこか痛みや違和感はないか * 全体的にリラックスしているか、緊張しているか 5. それぞれの感覚を、良い悪いの判断をせずに、ただ「気づく」ことだけに集中します。 6. 気づいたことに「ああ、肩に力が入っているな」「少し体が重たいな」と心の中で言葉にしてみても良いでしょう。 7. 最後に、もう一度ゆっくりと呼吸をして、体全体を軽く感じてみます。
実践のポイント 完璧に体のすべての部分をスキャンする必要はありません。今日は肩だけ、明日は呼吸だけ、というように、ピンポイントでも大丈夫です。10秒でも、30秒でも、できる範囲で試してみてください。電車を待つ時間、信号が変わるのを待つ時間など、スキマ時間を活用するのがおすすめです。
心のサインに気づく「感情の天気予報」ワーク
私たちは様々な感情を抱きますが、忙しさの中でその感情に気づかないふりをしたり、「ネガティブな感情は感じてはいけない」と蓋をしてしまったりすることがあります。完璧主義さんは特に、「常にポジティブでいなければ」「弱音を吐いてはいけない」と考えがちです。
目的 今の自分の感情に気づき、それを客観的に受け止める練習をします。感情を天気のように捉えることで、良い悪いの判断を手放しやすくなります。
やり方 1. 休憩時間や、何かタスクが終わった後など、ふと立ち止まった時に行います。 2. 今の自分の心の状態を、天気予報のように表現してみます。 * 「今は晴れやかな気持ちだな」 * 「なんだかどんよりしているな」 * 「少しイライラして、嵐模様かも」 * 「もやがかかったようにボンヤリしているな」 * 「穏やかな小春日和みたいだ」 3. 感じた感情を、良い悪いの判断をせずに、ただ「今の天気」として受け止めます。 4. なぜその天気なのか、原因を探る必要はありません。「ああ、今、こんな気分なんだな」と気づくだけで十分です。
実践のポイント 慣れないうちは、感情を言葉にするのが難しいかもしれません。それでも、「なんだかスッキリしない」「気分が重い」といった曖昧な表現でも構いません。感情にラベルを貼る練習は、自分自身の状態を理解するための大切な一歩です。これも完璧に正確な言葉を探す必要はありません。直感で感じた「天気」で表現してみましょう。
「『疲れた』を認める」優しい声かけワーク
心身のサインに気づいても、「でも休めない」「これくらいで疲れているなんて言えない」と思ってしまうのが完璧主義さんの傾向かもしれません。疲れている自分を認めることに、罪悪感や抵抗を感じる方もいるでしょう。
目的 疲れている自分、不完全な自分を否定せずに受け入れ、自分自身に休息や労いを許可する練習をします。
やり方 1. ミニ・ボディスキャンや感情の天気予報で、心身のサインに気づいた時に行います。 2. 気づいたサインに対して、自分自身に優しい言葉をかけてみます。心の中で、あるいは声に出しても良いでしょう。(周りに人がいなければ) * 「ああ、疲れているんだね」 * 「肩に力が入って辛いね」 * 「どんよりした気分で、頑張ったね」 * 「大丈夫だよ、少し休もうか」 * 「頑張りすぎたね、お疲れ様」 3. まるで大切な友人や子供に語りかけるように、自分を責める言葉ではなく、労い、いたわる言葉を選びます。
実践のポイント 最初は気恥ずかしかったり、嘘のように感じたりするかもしれません。それでも続けてみてください。完璧な言葉を探すのではなく、今自分が自分にかけてあげたいと感じる、温かい言葉を選んでみましょう。すぐに休息を取れなくても、「疲れている自分」を認めるだけでも、心は少し楽になります。
ワークを続けるためのヒント
これらのワークは、特別なスキルや長い時間を必要としません。しかし、忙しい中で習慣にするのは難しいと感じることもあるでしょう。
- 完璧を目指さない: 毎日できなくても大丈夫です。週に数回でも、思い出したらやってみる、というくらいの気持ちで取り組みましょう。
- 時間を決めない: 「寝る前に必ず」「仕事の休憩中に必ず」と決めすぎると、できなかった時に自分を責めてしまいます。「気づいた時に1回だけ」でも、大きな変化につながります。
- 「できたこと」に目を向ける: もし今日ワークができなかったとしても、「やらなかった自分」を責めないでください。「あ、今日はできなかったな」と気づいただけでも素晴らしいことです。そして、もし少しでもワークができたら、「できたこと」として自分を褒めてあげましょう。
完璧主義を手放し、心穏やかに過ごすために
心身のサインに気づき、自分を労わる練習は、完璧主義を手放す大切なステップです。完璧を目指し続けることは、自分自身をすり減らしてしまいます。時には立ち止まり、自分の内側の声に耳を傾ける時間を持つことは、あなたがあなたらしく、そして無理なく毎日を過ごすために必要なセルフケアです。
「これくらいで疲れているなんて」と思う必要はありません。あなたの「疲れた」は、あなただけのサインです。そのサインに気づき、優しく受け止めること。「疲れている自分もこれでOK」と認めることは、自己肯定感を育み、穏やかな心で日常を送るための基盤となります。
今日からほんの少しでも、心と体の声に耳を傾ける時間を持ってみませんか。それが、完璧主義の鎧を脱ぎ、自分を優しく労わる最初の一歩になるはずです。