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複数の顔を持つあなたのための「これでOK」。「全部完璧」を手放すヒントとワーク

Tags: 完璧主義, 手放す, これでOK, 役割, ワーク, 自分を労わる

複数の役割、全部「ちゃんと」こなそうとして疲れていませんか

仕事、家事、育児。私たちは日々、いくつもの役割を同時にこなしています。それぞれの役割で「良い母」「良い妻」「仕事ができる人」でありたいと願い、すべてを「ちゃんと」やろうと頑張るほど、心身が疲弊していくのを感じているかもしれません。

時間にも追われ、どれも完璧にできない自分に自己嫌悪を感じたり、他人の基準やSNSのキラキラした情報と比べて落ち込んだりすることもあるのではないでしょうか。

「全部ちゃんとやらなきゃ」という気持ちは、責任感や真面目さの表れでもありますが、それが自分自身を苦しめているとしたら、少し立ち止まって考えてみる時期かもしれません。

この記事では、複数の役割を持つあなたが、すべてを完璧にこなすことから少し距離を置き、心穏やかに「これでOK」と自分に許可を与えるためのヒントと、具体的なワークをご紹介します。

「全部完璧」が私たちを追い詰める理由

なぜ私たちは、複数の役割を持つと、より完璧を目指してしまい、そして疲れてしまうのでしょうか。

一つには、それぞれの役割に紐づく「理想のイメージ」があるからです。例えば、「子育て中は家をきれいに保つべき」「仕事では常に結果を出すべき」といった、自分の中にある(あるいは外から刷り込まれた)「こうあるべき」という基準です。

しかし、限られた時間や体力、そして予期せぬ出来事が日常には常にあります。子どもが熱を出したり、急な仕事が入ったり、ただ疲れて動けなかったり。そういった現実の中で、すべての「こうあるべき」を満たそうとすることは、物理的にも精神的にも無理が生じます。

そして、完璧にできない現実を目の当たりにしたとき、「私はダメだ」「もっと頑張らなければ」と自分を責めてしまう。この自己否定のループが、さらなる疲弊を生み出してしまいます。

「完璧」を手放し、「これでOK」を見つけるための考え方

「全部完璧」を手放すことは、「諦める」ことでも「サボる」ことでもありません。それは、自分にとって本当に大切なものは何かを見極め、限られたエネルギーをどこに注ぐかを選択する、「賢い手放し」です。

心穏やかに複数の役割をこなすためには、まず「完璧」の定義を緩めることから始めましょう。そして、「良い〇〇」であることの基準は、他人や社会が決めるものではなく、自分自身が決めて良いのだと許可することです。

複数の役割で「これでOK」を見つける具体的なワーク

ワーク1:役割ごとの「最低限これでOK」基準リスト作成

このワークでは、あなたが持っている主な役割や生活の領域ごとに、「完璧」ではなく「最低限これだけできればOK」という基準を設定します。

  1. 役割や領域を書き出す: あなたが日々関わっている主な役割や生活の領域をリストアップします。(例:仕事、家事、育児、パートナーとの関係、自分自身の時間、友人との関係など)
  2. 「最低限これでOK」を具体的に書く: リストアップしたそれぞれの項目について、「完璧な状態」ではなく、「これだけはやっておこう」「ここまでできれば今日の私としてはOK」と思える、ハードルの低い基準を具体的に書き出してみます。

    • 例:
      • 仕事: 連絡事項の確認だけは毎日欠かさない。
      • 家事: シンクに食器をためない。
      • 育児: 寝る前に絵本を一冊読む。
      • 自分自身の時間: 毎日5分だけ好きな飲み物を飲む。
      • パートナーとの関係: 1日一度は短くても会話する。

このリストを作ることで、自分が無意識のうちにすべての役割で高い基準を設定していないかが見えてきます。そして、「最低限OK」のラインを意識することで、必要以上に自分を追い詰めることを減らすことができます。

ワーク2:「やらないこと」リスト作成

完璧を目指す中で、「本当はやらなくても良いこと」「誰かに任せても良いこと」まで抱え込んでいませんか。このワークでは、意識的に手放すことをリストアップします。

  1. 抱え込んでいることを書き出す: 日々「ちゃんとやらなきゃ」と思って努力していることの中で、少し負担に感じていることを思いつくまま書き出します。(例:毎食、手作りのおかずを何品も作る、子どもの持ち物にすべて完璧に名前をつける、職場の煩雑な頼まれごとを引き受ける、週末にまとめて長時間掃除をする)
  2. 手放すことを決める: 書き出したリストの中から、「今はやらない」「頻度を減らす」「誰かに任せる」「やり方を変える」といった形で、意識的に手放すことを決めます。

    • 例:
      • 「毎食手作り3品」をやめて、週に数回はお惣菜や冷凍食品を使う。
      • 「週末の長時間掃除」をやめて、毎日短い時間で一部分だけ片付ける習慣に変える。
      • 「職場の煩雑な頼まれごと」は、自分の業務に支障が出る場合は断る選択肢を持つ。

このワークは、最初は少し罪悪感を感じるかもしれません。しかし、手放すことで生まれた時間や心の余裕を、本当に大切なことや、自分を労わるために使うことができます。「やらないことを決める」ことは、自分を守り、より有意義な時間の使い方をするための前向きな選択なのです。

ワーク3:今日の「これでOK」を見つける振り返り

一日の終わりに、できたこと、OKだったことに意識を向ける練習です。

  1. 一日を振り返る: 今日一日を振り返り、それぞれの役割や領域で「完璧ではなかったかもしれないけれど、これだけはできたな」「これはOKだったな」と思えることを見つけます。
  2. 「OKリスト」として書き出す: 見つけた「これでOK」だったことを、短い言葉でリストにしていきます。

    • 例:
      • 仕事で懸念事項の報告ができた。
      • 洗濯物が乾いて片付けられた。
      • 子どもが楽しそうにご飯を食べてくれた。
      • お風呂にゆっくり浸かる時間があった。
      • パートナーと今日の出来事を少し話した。

完璧を目指すとき、私たちはどうしても「できなかったこと」「足りないこと」に目が行きがちです。しかし、意識的に「できたこと」「OKだったこと」を探すようにすることで、自分はちゃんとやれているのだ、という実感が湧いてきます。小さなOKの積み重ねが、自己肯定感を育み、「全部完璧でなくても大丈夫だ」という安心感につながっていきます。

ワークを続けるためのヒント

これらのワークは、一度やって終わりではなく、日常の中で繰り返し実践することで効果を発揮します。

「全部完璧」を手放した先にあるもの

複数の役割をこなす中で、「全部完璧」を手放し、「これでOK」を許可することは、自分自身への最大の労りです。

それは、自分ができることの範囲を認め、できないことは手放し、心にゆとりを持って日々を過ごすための選択です。完璧ではないかもしれないけれど、自分に優しくなれた分だけ、周りの人にも優しくなれるでしょう。

「全部完璧」を目指すのではなく、「これでOK」を一つずつ積み重ねていくこと。その小さな一歩が、あなたの毎日を、もっと心穏やかで、あなたらしい彩りのあるものに変えていくはずです。自分に優しく、「手放す練習」を始めてみませんか。