完璧主義を手放す「今、ここ」ワーク。『不完全な現実』をこれでOKと認める練習
完璧主義を手放したいけれど、どうすれば良いか分からない。いつも時間に追われて心に余裕がない。過去の失敗を後悔したり、理想通りにならない未来を不安に思ったりして、今の自分を責めてしまう。そんなお悩みをお持ちではないでしょうか。
私たちは、仕事、家事、育児など、日々のあらゆることを「完璧にこなさなければ」と考えがちです。特に時間に限りがある中で、すべてを高い基準でやろうとすると、心身ともに疲弊してしまいます。そして、少しでもうまくいかないことがあると、「あの時こうしていれば」「もっとちゃんとやるべきだった」と過去を悔やんだり、「このままではダメだ」と未来を悲観したりして、目の前の「今の自分」や「今の状況」を受け入れられず、自己嫌悪に陥ってしまうことがあります。
過去の後悔や未来の理想にとらわれることは、完璧主義の根深い問題の一つです。完璧な過去も未来も存在しないのに、そこに意識が向かうことで、唯一変えられる「今、ここ」がおろそかになり、不完全な現実を受け入れることが難しくなります。
しかし、心穏やかに過ごすためには、完璧ではない「今、ここ」にある現実を、そのまま「これでOK」と認める練習が大切です。今回は、過去や未来の思考から離れ、「今、ここ」に意識を向け、不完全な現実を受け入れるための具体的なワークをご紹介します。どれも日々の生活の中で無理なく試せる、小さな一歩となるようなものばかりです。
ワーク1:今日の「不完全リスト」作成ワーク
このワークは、完璧にできなかったことや計画通りに進まなかったことを、感情や評価を交えずにただ書き出すことで、「不完全な現実」を客観的に認識する練習です。
ステップ:
- 夜寝る前や、一日の終わりに少し時間が取れる時に、ノートやメモアプリを用意します。
- 今日の出来事を振り返り、完璧にできなかったこと、計画通りに進まなかったこと、やり残したことなどをリストアップします。
- 例:「夕食は作りたいメニューがあったけれど、時間がないからレトルトにした」
- 例:「子どもとのんびり遊ぶ時間が取れなかった」
- 例:「仕事のタスクが一つ終わらなかった」
- 例:「部屋の片付けが途中で終わってしまった」
- リストを書く際、「~すべきだったのに」「私はダメだ」といった評価や自己否定の言葉は一切含めず、ただ事実だけを記述します。「レトルトになった」「時間が取れなかった」「終わらなかった」のように、出来事そのものを淡々と書くようにします。
- 書き終えたリストを、少し距離を置いて眺めます。「これが、今日の私の現実、今日の不完全さなのだな」と、善悪の判断をせずにただ受け止めます。
なぜ効果があるのか: 完璧主義の人は、不完全な現実から目を背けたり、自分を責めたりしがちです。このワークは、不完全な部分を具体的に認識し、「そういう日もある」「これが現実だ」と客観的に受け入れる練習になります。不完全さを否定するのではなく、まず「あるがまま」を認めることから始めます。
ワーク2:「今、ここ」感覚ワーク
過去の後悔や未来への不安は、私たちの意識が「今、ここ」から離れている時に起こりやすくなります。このワークは、五感を使って目の前の瞬間に意識を戻し、「不完全かもしれないけれど、これが今の現実だ」と受け入れる練習です。短時間でできるので、一日の様々な場面で試してみてください。
ステップ:
- 家事の合間、移動中、休憩時間など、どんな場面でも構いません。数分だけ時間を取ります。
- 意識を、今自分がいる場所、状況に向けます。
- 五感(見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れる)を使って、周りの世界や自分の体で起きていることを観察します。
- 目に映るもの(散らかった部屋でも、その中に見える物の色や形)
- 耳に聞こえる音(子どもの声、外の車の音、自分の呼吸の音)
- 鼻で感じる香り(淹れたお茶の香り、洗濯洗剤の香り)
- 口の中で感じる味(飲み物の味、歯磨き後のスッキリ感)
- 肌で感じるもの(服の感触、椅子の硬さ、風の流れ)
- 過去の出来事や未来の心配事が頭をよぎっても、それらを追い払おうとせず、「あ、今、過去のことを考えているな」「未来の心配をしているな」と気づき、再びそっと意識を五感で感じる「今、ここ」に戻します。
- 目の前の現実が完璧でなくても、例えば部屋が散らかっていても、「これが今の現実だ」と、評価せずにただ受け止める練習をします。
なぜ効果があるのか: 「今、ここ」に意識を集中することで、過去の後悔や未来の不安といった、頭の中で作り出した思考の世界から離れることができます。目の前の不完全な現実を五感を通してそのまま受け止める練習は、現実を受け入れる土台を作ります。
ワーク3:「小さなOK」見つけワーク
完璧主義の人は、「できたこと」よりも「できなかったこと」に目が行きがちです。このワークは、たとえ完璧でなくても「できたこと」「進んだこと」に意識を向け、「不完全な中でも、これはOK」と認める練習です。
ステップ:
- 何かタスクを終えた後(完璧に終わらなくても構いません)、あるいは一日の終わりに、今日取り組んだことを振り返ります。
- 完璧ではなかったとしても、「ここだけはOK」「これだけでもできた」という点を探します。
- 例:部屋の片付けが完璧に終わらなかった→「玄関だけは片付けられた」「机の上だけはスッキリさせた」
- 例:作りたかった夕食が作れなかった→「家族みんなで食卓を囲めた」「温かい汁物だけは用意できた」
- 例:仕事のメールすべてに返信できなかった→「重要なメールには返信できた」「明日やるべきメールをフォルダ分けできた」
- 例:子どもと遊ぶ時間が少ししか取れなかった→「寝る前に絵本を一冊読んであげられた」「短い時間でも笑顔を見られた」
- 「これが今日の『小さなOK』だ」と心の中で認めます。もし可能であれば、書き出すのも良いでしょう。
なぜ効果があるのか: このワークは、「すべて完璧か、そうでなければゼロか」という完璧主義的な白黒思考を和らげます。不完全な中に「できたこと」や「OKな部分」を見出すことで、自己否定感を減らし、自分や状況を肯定的に捉える視点を養うことができます。小さなOKを積み重ねることで、不完全でも前に進んでいる感覚を得られます。
ワークを続ける上でのヒント
これらのワークは、すぐに完璧にこなせるようになるものではありません。また、「ワークを完璧にやらなければ」と考える必要もありません。
- 完璧を目指さない: ワークそのものを完璧にやろうとせず、「今日は少しやってみよう」「できる範囲でやってみよう」くらいの気持ちで取り組むことが大切です。
- 小さな変化を認める: 劇的な変化を期待せず、ほんの少しでも「過去の後悔にとらわれる時間が減ったな」「不完全でも少しだけホッとしたな」といった小さな変化に気づくようにしましょう。
- 自分を労わる: ワークがうまくいかない日があっても、自分を責めないでください。「今は疲れているんだな」「難しく感じているんだな」と、ただ自分の状態を認め、自分自身に優しい言葉をかけてあげましょう。「今日はこれでOK」と自分を許す練習でもあります。
完璧主義を手放し、心穏やかな日常へ
過去の後悔や未来の理想にとらわれず、「今、ここ」にある不完全な現実を「これでOK」と受け入れることは、完璧主義を手放す上でとても重要なステップです。
ご紹介したワークを通して、目の前の現実をありのままに受け止め、不完全な中でも「できたこと」や「OKな部分」に目を向ける練習を続けてみてください。すぐに劇的な変化はないかもしれませんが、少しずつ心穏やかに過ごせる時間が増えていくはずです。
自分自身に優しく、「これでOK」と許可を出すこと。それが、完璧主義を手放し、心軽やかに毎日を送るための大切な鍵となります。あなたの毎日が、少しでも穏やかになることを願っています。