完璧主義で「動けない」を解決。忙しい毎日で「すぐ行動」できるハードル下げワーク
完璧主義を手放し、心穏やかな日常を送るためのヒントをお届けしています。今回は、「完璧にやろう」と思うあまり、かえって行動に移せなくなってしまう、いわゆる「完璧主義によるフリーズ」の状態から抜け出すための具体的なワークをご紹介します。
仕事も家事も育児も、すべてを高いレベルでこなそうと頑張っていらっしゃる方ほど、「やろう」と決めたことがなかなか始められず、時間だけが過ぎていくことに焦りや自己嫌悪を感じやすいかもしれません。「完璧な準備ができてから」「失敗しないようにしっかり計画してから」と考えているうちに、最初の一歩がどんどん重くなってしまうという経験はないでしょうか。
こうした「動けない」状態は、決してあなたが怠けているわけではありません。むしろ、「完璧を目指したい」という強い気持ちが、かえって行動へのハードルを上げてしまっていることが原因かもしれません。
ここでは、そんな状況から抜け出し、忙しい毎日でも「まずは行動してみる」「不完全でもOKとする」ための具体的な思考と行動のワークをいくつかご紹介します。
なぜ完璧主義だと「動けない」と感じるのか
完璧主義の方は、目標が高く、理想の状態を強く思い描く傾向にあります。これは素晴らしい資質ですが、同時に「理想通りにならなかったらどうしよう」「失敗したら格好悪い」といった恐れも生みやすくなります。
- 失敗への恐れ: 完璧を目指すほど、失敗した時のショックも大きくなりがちです。失敗を避けたい気持ちから、行動そのものを躊躇してしまいます。
- 準備へのこだわり: 「完璧な結果のためには、完璧な準備が必要だ」と考え、準備に時間をかけすぎたり、必要な情報が揃うまで待ったりしてしまいます。
- 「ゼロか百か」思考: 「完璧にできるか、全くやらないか」という極端な考え方になりやすく、少しでも不完全になりそうだと感じるなら、いっそやらないという選択肢を選んでしまうことがあります。
- 評価への敏感さ: 他人からどう見られるかを気にしすぎると、「完璧でない自分」を見せることへの抵抗感が強くなり、行動が億劫になります。
こうした思考パターンが複雑に絡み合い、「やろう」という気持ちはあるのに体が動かない、または着手してもすぐに手が止まってしまう、という状態を引き起こしてしまうのです。
「すぐ行動」できるようになるためのハードル下げワーク
完璧主義による「動けない」状態を乗り越えるためには、「完璧」を目指すこといったん手放し、「まず行動すること」そのものに焦点を当て、行動へのハードルを意図的に下げてみることが有効です。
ワーク1:タイマーを使った「5分だけ」着手ワーク
これは、とにかく最初の5分だけ、目の前のタスクに着手してみるワークです。
方法:
- なかなか始められないタスク(例:たまりがちな洗濯物を畳む、メールの返信を書く、調べものをする)を一つ選びます。
- スマートフォンのタイマーやキッチンタイマーを「5分」にセットします。
- 「このタイマーが鳴るまで、とにかくこのタスクに触れてみよう」と決めます。完璧に終わらせる必要はありません。ただ、手を付けるだけ、最初のステップだけ踏み出すことに集中します。
- 洗濯物なら:カゴのそばに行く、一枚手に取る、畳み始める(途中で止めてOK)
- メールなら:メールソフトを開く、新規作成ボタンを押す、件名だけ入力する(本文は書かなくてもOK)
- 調べものなら:関連するキーワードで検索エンジンを開く、最初のリンクをクリックしてみる(記事は読まなくてもOK)
- タイマーが鳴ったら、そこで終了しても構いません。「もう少し続けられそうだな」と感じたら、続けても良いですし、また後で5分だけやろうと決めても良いです。
効果: 「完璧に全てを終わらせなければ」というプレッシャーから解放され、「たった5分なら」と気軽に着手できます。一度手を付けてみると、意外とそのまま続けられたり、「思っていたほど大変ではなかった」と感じたりすることがあります。最初の一歩を踏み出すこと自体が、次の行動へのハードルを大きく下げてくれます。
ワーク2:「最小単位」分解ワーク
大きくて重く感じるタスクを、これ以上分解できないほど小さなステップに細分化するワークです。
方法:
- 取り掛かりたいけれど、どこから手を付けて良いか分からなかったり、重く感じたりするタスク(例:部屋の片付け、企画書の作成、習い事の練習)を選びます。
- そのタスクを、思いつく限り細かいステップに分解します。例えば「部屋の片付け」なら、
- 掃除機をかける
- 床の物をどかす
- 本棚を整理する
- 机の上を片付ける
- ...といった大まかなステップから、さらに
- 机の上のペンをペン立てに戻す
- 読み終わった本を一冊本棚に入れる
- 床に落ちているゴミを一つ拾う
- ...のように、たった1〜2分でできるような最小単位まで分解していきます。
- 分解したリストを眺め、「今日、この中でどれか一つだけ、やってみようかな」と気楽に選び、実行します。リストの最初から順番にやる必要もありません。一番ハードルの低い、簡単にできそうなものを選びます。
効果: タスク全体を一度に考えず、最小単位に分解することで、「これならできる」というステップが見つかりやすくなります。大きな塊に見えていたタスクが、小さな「できること」の集合体だと認識できるようになり、圧倒される感覚が軽減されます。完璧に全てを終えなくても、リストの中から一つでも実行できれば、それは立派な「できたこと」です。
ワーク3:「未完了」を許容するリスト作成ワーク
完璧主義の方は、「終わらせてから次へ」と考えがちですが、あえて「途中」や「未完了」の状態を可視化し、それを許容する練習をするワークです。
方法:
- ノートやメモアプリに「やっている途中リスト」や「未完了だけどOKリスト」のようなものを作成します。
- ワーク1やワーク2で少しだけ着手したタスクや、時間切れで途中になったタスクを、罪悪感なくリストに書き出します。
- 例:企画書の最初の見出しだけ考えた
- 例:洗濯物をカゴから出しただけ
- 例:子どもの明日の準備で靴下だけ用意した
- 例:夕食のメニューを考える途中で別の用事ができた
- リストを見ながら、「よし、今はこれが未完了の状態なんだな」と、その状態を客観的に眺めます。「完璧に終わっていない」と自分を責めるのではなく、「ここまでやったんだな」「これが今の状態なんだな」と、事実として受け止めます。
- リストにある未完了タスクの全てを、すぐに終わらせる必要はありません。次にいつ、どのステップをやるか考えるきっかけにしても良いですし、しばらくそのまま放置しても良いです。
効果: 「終わっていない=ダメ」という完璧主義的な思考から、「終わっていなくても、まず着手した」「途中でも進めた」という事実に目を向けられるようになります。未完了がある状態を許容することで、心の中にゆとりが生まれ、「完璧に終わらせなきゃ」という強迫観念が和らぎます。これにより、途中までしかできなくても「まずやってみよう」という気持ちになりやすくなります。
ワークを実践する上でのヒント
- 「できたこと」に目を向ける: ワークを通じて、たとえわずかでも着手できた自分を褒めてあげてください。結果の完璧さではなく、行動したプロセス自体を認めましょう。
- 自己批判しない: 「もっとできたはずだ」「こんなことではダメだ」といった否定的な声が浮かんできても、それに耳を貸さないように意識します。まずは「やってみた」自分を肯定します。
- 無理はしない: 「毎日やらないと」と完璧主義を発動させないでください。疲れている時は休むことも大切です。できる時に、できる範囲で試してみましょう。
- 「これでOK」の基準を変える: 「完璧に終えること」を「これでOK」の基準にするのではなく、「まず着手できたこと」「少しでも進めたこと」を「これでOK」の基準にしてみましょう。
完璧主義を手放すことで得られるもの
完璧主義を手放し、「まずは行動してみる」「不完全でもOK」という新しい基準を取り入れることで、あなたは「動けない自分」から解放され、より軽やかに日常を過ごせるようになります。
完璧でない自分を許せるようになると、心にゆとりが生まれ、自己肯定感も自然と高まってきます。時間に追われる感覚も和らぎ、目の前のことに集中しやすくなるでしょう。完璧ではないからこそ、失敗を恐れずに新しいことにも挑戦できるようになります。
完璧主義は、あなたを苦しめるものではなく、単なる思考の習慣です。少しずつ新しい習慣を取り入れることで、自分にとってより心地よい「これでOK」のスタイルを見つけていくことができるはずです。
この記事でご紹介したワークが、あなたの心に少しでもゆとりと安心感をもたらすきっかけとなれば幸いです。