完璧主義さんが「今」を大切にするワーク 将来の不安を手放し心穏やかに
常に先の心配ばかり…完璧主義がもたらす「未来への不安」に寄り添う
仕事に家事に育児にと、毎日時間に追われ、常に「あれもしなくちゃ」「これもしなくちゃ」と考えていると、心休まる暇がないと感じているかもしれません。目の前のタスクを完璧にこなそうとする一方で、ふと将来のことを考えると漠然とした不安に襲われる、という経験はないでしょうか。
完璧主義の傾向がある方は、将来起こりうるリスクを予測し、それをコントロールしようとします。これは裏を返せば、不確実な未来に対する不安が強いことでもあります。しかし、いくら先のことを心配しても、実際に起こるかどうかは誰にも分かりません。そして、その不安は往々にして、今この瞬間の平穏を奪ってしまいます。
「これでOKワークショップ」では、こうした完璧主義からくる疲弊や自己肯定感の低さに寄り添い、心穏やかに日常を送るための具体的なワークをご紹介しています。今回は、特に「将来への漠然とした不安」に焦点を当て、心穏やかに「今」を大切にするための具体的な方法をお伝えします。
なぜ完璧主義だと「将来の不安」を感じやすいのか?
完璧を目指す思考パターンは、「未来」を先回りして予測し、想定されるあらゆる問題を防ごうとします。これはある意味、準備周到であるとも言えますが、過度になると「もし失敗したら」「うまくいかなかったら」といったネガティブな未来ばかりを想像し、不安がどんどん膨らんでしまうことがあります。
特に、現代は情報過多で変化も速く、SNSなどで他人の成功ばかりが目に付くこともあります。そうした状況に触れるたびに、「自分はこのままで大丈夫だろうか」「もっと頑張らないと」といった焦りや不安が増幅されやすいのかもしれません。
未来への不安は、往々にして私たちのエネルギーを消耗させ、今この瞬間の喜びや達成感を感じにくくさせます。そして、不安を打ち消そうとさらに完璧を目指し、心身ともに疲弊してしまうという悪循環に陥ることがあります。
「今」を大切にするための3つの具体的なワーク
将来への不安に囚われず、心穏やかに過ごすためには、「今、ここ」に意識を向ける練習が有効です。ここでは、忙しい日常の合間にも無理なく取り入れられる具体的なワークを3つご紹介します。
ワーク1:ほんの数分間の「今、ここ」呼吸
漠然とした不安を感じたとき、私たちの意識は過去の後悔や未来への懸念にさまよいがちです。そこで、意識的に「今」に戻ってくる練習をします。
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方法:
- 椅子に座るか、立ったままでも構いませんので、姿勢を少し整えます。
- 目を閉じるか、一点をぼんやりと見つめます。
- 自分の呼吸に意識を向けます。吸う息、吐く息に注意を向け、空気が出入りする感覚、お腹や胸の動きを感じてみます。
- 何か考え事が浮かんできても、「考え事をしているな」と気づき、再びそっと呼吸に意識を戻します。
- これを1分〜3分程度行います。
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効果: 呼吸に意識を向けることは、今この瞬間に自分自身をグラウンディングさせる(地に足をつける)効果があります。不安や思考の渦から一時的に離れ、心を落ち着けることができます。
- 実践のポイント: 完璧に「無心」になる必要はありません。考え事が浮かぶのは自然なことです。「できた、できない」と判断せず、ただ呼吸に意識を戻すことを繰り返すだけで十分です。通勤途中や家事の合間、寝る前など、日常生活の隙間時間に短い時間から試してみてください。
ワーク2:不安の「見える化」と「今できること」分解ワーク
漠然とした不安は、正体が分からないからこそ大きく感じられます。不安の対象を明確にし、具体的な行動に落とし込むことで、コントロール可能なものとして捉え直します。
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方法:
- ノートやメモ帳、スマートフォンのメモ機能など、書き出しやすいものを用意します。
- 今、漠然と不安に感じていることを、頭に浮かぶままに書き出してみます。「子どもの将来のこと」「自分のキャリア」「親のこと」「健康のこと」など、箇条書きで構いません。
- 書き出したそれぞれの不安について、「その不安の具体的な内容は何か?」をもう少し詳しく掘り下げて記述します。
- さらに、「その不安に対して、今の自分にできることは何だろう?」という視点で、小さく具体的な行動を考え、書き出します。例えば、「子どもの将来が不安」→「具体的にどんなこと?」→「大学の資金」→「今できること」→「まずは教育資金に関する情報収集を少しだけする」「月々〇円貯蓄できるか家計を見直す」といった具合です。もし「今すぐできること」が見つからない、あるいは大きすぎる場合は、「調べる」「誰かに相談する」といった第一歩を考えます。
- 「今できること」としてリストアップされたものの中から、今日、あるいは今週中に、ほんの少しでもできそうなことを一つか二つ選び、それを実行することを意識します。
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効果: 不安を書き出すことで、その正体が明らかになり、感情に圧倒されにくくなります。また、「今できること」に焦点を当てることで、漠然とした不安が具体的な行動目標に変わり、少しずつでも前に進んでいる感覚を得られます。
- 実践のポイント: 全ての不安に対する答えを一度に見つけようとしないことが大切です。完璧な解決策でなくて構いません。小さくても具体的な一歩を踏み出すことが目的です。書き出すだけで心が軽くなることもあります。誰かに見せるものではないので、正直な気持ちを書き出しましょう。
ワーク3:「完璧じゃなくて大丈夫」を伝える未来レター
完璧主義の背景には、「こうあるべき」という強い理想や、「失敗してはいけない」という恐れがあります。未来の自分を想像し、自分自身に優しいメッセージを送ることで、今の自分を少し客観的に、そして温かく見つめる練習をします。
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方法:
- 数週間後、数ヶ月後、あるいは1年後など、近い未来の自分を想像します。
- 未来の自分から、今の自分へ手紙を書くような気持ちで、メッセージを書いてみます。
- メッセージの内容は、「完璧でなくても大丈夫だよ」「あのとき一生懸命頑張っていたね」「少し休んでも良いんだよ」「〇〇(頑張っていること)は、このままで十分素晴らしいよ」といった、自分を労い、励まし、肯定するような言葉を選びます。
- 書き終えたら、声に出して読んでみたり、見えるところに置いて時々読み返したりします。
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効果: 未来の自分という視点から、今の自分を少し距離を置いて見つめることで、客観性が生まれます。また、自分自身に優しい言葉をかけることで、自己肯定感を高め、完璧でなくても良いという安心感を得られます。
- 実践のポイント: 長い手紙を書く必要はありません。短いメッセージや単語でも構いません。大切なのは、自分自身に温かい言葉を投げかけるという行為です。うまくいかない日があっても、未来の自分は今の自分をきっと労ってくれるだろう、という気持ちで書いてみましょう。
ワークを日常に取り入れるヒントと継続のために
これらのワークを「完璧に」こなそうとしないことが最も重要です。
- 「完璧主義を手放すワーク」を完璧にやらない:毎日決まった時間にやる必要はありません。不安を感じたとき、心が疲れたときなど、必要だと感じたときに思い出して試すだけでも十分です。
- 小さな一歩から:例えば呼吸のワークなら、最初は1分から。不安の見える化なら、まず1つだけ書き出してみる。未来レターも、一行から始めてみる。小さく始めることで、心理的なハードルが下がります。
- 「できたこと」に注目:ワークができた日も、できなかった日も、自分を責めないでください。「今日は1分だけ呼吸に意識を向けられた」「不安を一つだけ書き出してみた」など、できた小さな一歩に注目し、自分を褒めてあげましょう。
まとめ:「今、ここ」に心穏やかな時間を見つける
完璧主義を手放し、「今」を大切にすることは、未来への不安から自由になり、日々の生活に心穏やかな時間を取り戻すことにつながります。ご紹介したワークは、特別な場所や時間が必要なものではありません。忙しい毎日の中で、少し立ち止まり、自分自身に優しく意識を向けるためのツールとして、ぜひ試してみてください。
完璧でなくても大丈夫。たとえ小さな一歩でも、「今」の自分に意識を向け、労る時間を設けることが、心穏やかな日々への確かな道となります。自分を責めることなく、できたことに目を向けながら、少しずつ「これでOK」を増やしていきましょう。
ご自身のペースで、心と体を大切にしながら、日常に小さな「これでOK」を見つけていかれることを願っています。