自分や他者への過剰な期待を手放す。完璧主義さんのための「期待値調整」ワーク
いつも疲れている、イライラするのは「期待」が原因かもしれません
仕事に家事に育児にと、毎日やることが山積みで、気がつけばいつも時間に追われている感覚。ひとつひとつのことを完璧にこなそうとするほど、終わらず、疲れてしまう。そして、理想通りにいかない自分や周囲に、ついイライラしてしまったり、落ち込んでしまったりすることはありませんか。
もしかすると、その疲弊やイライラは、「完璧でなければならない」という思い込みからくる、自分や他者への「過剰な期待」が原因かもしれません。
私たちは無意識のうちに、「仕事はこうあるべき」「母親ならこうするべき」「パートナーはこうしてくれるはず」といった、様々な「期待」や「ねばならない」を心の中に抱えています。そして、完璧主義の傾向が強いほど、その期待値は高くなりやすいものです。
でも、その高い期待が現実と少しでもずれたとき、私たちは「できていない自分」を責めたり、「期待通りにならない他者」に不満を感じたりしてしまいます。これが、心に余裕がなくなり、常に疲弊してしまう大きな理由の一つです。
この記事では、完璧主義からくる自分や他者への過剰な期待に気づき、心穏やかな「これでOK」ラインに調整するための具体的なワークをご紹介します。難しいことや特別な準備は必要ありません。いつもの日常の中で、少し立ち止まって自分の心を見つめる時間を持ってみませんか。
なぜ完璧主義者は期待を高く設定しやすいのか
完璧主義の根底には、「完璧であれば、失敗しない」「完璧であれば、認められる」「完璧であれば、安心できる」といった心理があることがあります。こうした考えから、自分にも他者にも高いレベルを求めがちになります。
- 理想の自分像: 仕事も家庭も完璧にこなす自分を目指し、そこから外れることを許せない。
- 失敗への恐れ: 少しの失敗も許せず、完璧に準備し、完璧に実行しようとする。
- 他者評価への意識: 周囲からどう見られているかを気にし、「ちゃんとしている」と思われたい気持ちが、自分への高いハードルとなる。
- コントロール欲求: 物事を自分の思い通りに進めたい気持ちが強く、他者にも特定の行動を強く期待してしまう。
しかし、現実の私たちは完璧ではありませんし、他者も私たちとは異なる考えや状況を持っています。そのため、高い期待は裏切られやすく、自分を責めたり、他者に失望したりする原因となってしまうのです。
完璧主義が生む過剰な期待を手放すための「期待値調整」ワーク
ここでは、あなたの心の中にある無自憬な期待に気づき、現実的で心穏やかな「これでOK」ラインに調整するための3つのステップをご紹介します。
ワーク1:自分の「期待」をリストアップする
まず、あなたが日々感じている「期待」や「ねばならない」を「見える化」することから始めましょう。
- やり方:
- 紙やノート、スマートフォンのメモ機能など、何でも構いませんので、書き出せるものを用意します。
- 仕事、家事、育児、パートナーシップ、自分自身のことなど、領域ごとに区切って考えてみましょう。
- 「〇〇は〜であるべき」「△△は当然〜してくれるはず」「私は〜ねばならない」といった形で、具体的な期待や思い込みを書き出していきます。
- 例えば、「夕食は毎日手作りで栄養バランスが完璧でなければならない」「子どもは言われたらすぐに動くべき」「職場には誰よりも早く出社すべき」「疲れていても弱音を吐くべきではない」など、どんな小さなことでも構いません。頭に浮かんだものを正直に書き出してみてください。
- 実践のポイント:
- 時間を決め、「この10分間で思いつくままに書き出す」といったように集中すると、意外な期待に気づくことがあります。
- 書き出すこと自体が目的です。書かれた内容が良いか悪いか、正しいか間違っているかといった判断はせず、まずは客観的にリストアップしましょう。
- なぜ有効か:
- 普段は無意識に抱えている期待を言語化し、目の前にすることで、それが「当たり前のこと」ではなく、自分が設定した「期待」であることに気づくことができます。客観的に捉える第一歩となります。
ワーク2:期待値の「現実度」と「必要度」を評価する
リストアップされたあなたの期待は、今の現実とかけ離れていないでしょうか。そして、その期待は本当に手放せないほど重要なものでしょうか。一つずつ冷静に評価してみましょう。
- やり方:
- リストアップしたそれぞれの期待に対して、以下の2つの視点から考えてみましょう。
- 現実度: 「それは、今の自分や状況にとって現実的な期待でしょうか?」「相手に期待している場合、それは相手にとって可能なことでしょうか?」
- 必要度: 「その期待は、本当に必要でしょうか?」「完璧でなくても、別の方法で目的は達成できないでしょうか?」「その期待を手放したら、何か決定的に困ることはありますか?」
- 現実的でない、あるいは手放しても問題なさそうな期待に印をつけてみましょう。
- リストアップしたそれぞれの期待に対して、以下の2つの視点から考えてみましょう。
- 実践のポイント:
- 「〜べき」という思考が強いと、「必要だ」と思い込んでしまいがちです。少し距離を置いて、「もしこれができなくても、世の中は終わらないな」「他の人はどうしているかな」など、柔軟に考えてみましょう。
- 「完璧」を目指すのではなく、「十分」な状態はどんなものかを想像してみるのがヒントになります。
- なぜ有効か:
- 自分の期待が、実は現実とはかけ離れていることや、自分が勝手に「必要だ」と思い込んでいるだけであることに気づけます。手放すことへの抵抗が和らぎます。
ワーク3:期待値を「これでOK」ラインに引き下げる練習
非現実的だったり、必要度が低いと評価した期待について、具体的な「これでOK」ラインを再設定してみましょう。
- やり方:
- ワーク2で印をつけた期待について、「完璧」ではなく「これでOK」と思える具体的な基準を考えます。
- 例えば、
- 「夕食は毎日手作りで栄養バランスが完璧でなければならない」→「週に3回は簡単なメニューでOK」「惣菜や冷凍食品も上手に活用してOK」
- 「子どもは言われたらすぐに動くべき」→「一度で動かなくても、数回声をかけたらOK」「自分で気がつくのを待ってみることもOK」
- 「職場には誰よりも早く出社すべき」→「始業時刻に間に合えばOK」「自分の担当業務の準備が時間内にできればOK」
- 「疲れていても弱音を吐くべきではない」→「信頼できる家族や友人に「疲れた」と話してOK」「自分のために休憩時間をしっかり確保してOK」
- このように、「〜すべき」を「〜でOK」や「〜できたらいいな」に変えて、具体的な行動や考え方の基準を書き直します。
- 実践のポイント:
- 最初から大幅にハードルを下げるのが難しければ、まずは少しだけ緩めてみることから始めましょう。
- 書き出した「これでOK」ラインを、デスクや冷蔵庫など、日常的に目につく場所に貼っておくのも効果的です。
- 実際に「これでOK」で終えてみた時に、何が起きるか観察してみましょう。意外と何の問題もないことに気づくかもしれません。
- なぜ有効か:
- 具体的な行動基準が「完璧」から「これでOK」に変わることで、日々のタスクへの心理的な負担が軽減されます。
- 「できたこと」のハードルが下がり、小さな達成感を感じやすくなります。自分を責める機会が減り、自己肯定感に繋がります。
- 他者への期待値が現実的になることで、相手へのイライラが減り、より穏やかな関係を築きやすくなります。
完璧主義を手放すことは、自分や周囲を「許す」こと
期待値を下げることに対して、「サボっているのでは」「手を抜いている」といった罪悪感を感じるかもしれません。しかし、これは決して手抜きではありません。
それは、完璧ではない自分を受け入れ、「これでOK」と許可することです。そして、完璧ではない他者もそのまま受け入れ、「これでOK」と許すことです。
過剰な期待を手放すことは、自分自身にも、そして大切な家族や職場の仲間にも、無理のない、より優しい視点を向けることに繋がります。
小さな一歩から、心穏やかな日常へ
ご紹介したワークは、一度行えばすべて解決する魔法ではありません。完璧主義の傾向は、これまでの経験の中で培われた思考パターンです。ゆっくりと、時間をかけて慣らしていくことが大切です。
すぐに完璧にできなくても構いません。ワークを通して、ほんの少しでも自分の期待に気づき、意識するだけでも大きな一歩です。
そして、今日の自分は「これができた」「これくらいでOKにした」という小さな成功に目を向けて、自分自身を労わってあげてください。
完璧を目指す辛さから解放され、「これでOK」という心穏やかな基準で、あなたらしい日々を送れるようになることを願っています。