完璧主義で「最初の一歩」が踏み出せないあなたへ。小さく始める3つのワーク
完璧を目指すあまり、物事の最初の一歩がなかなか踏み出せないと感じることはありませんか。仕事、家事、育児。やるべきことはたくさんあるのに、「ちゃんとやろう」「完璧にこなさなければ」と考えると、そのタスクがどんどん大きく見えてきて、始める前から圧倒されてしまう。そして、結局何も始められないまま時間が過ぎ、自分を責めてしまう。そんな経験があるかもしれません。
時間がない中で、さらに行動できない自分に苛立ち、自己嫌悪に陥ってしまう。完璧主義が、行動のハードルを上げて、私たちを立ち止まらせてしまうことがあるのです。
でも、大丈夫です。完璧を目指すことと、行動できないことは、イコールではありません。完璧主義の傾向がある方でも、行動しやすくなる具体的な思考の習慣やワークがあります。それは、「最初から完璧を目指さないこと」、そして「小さく始めること」です。
今回は、完璧主義ゆえに最初の一歩が踏み出せないと感じている方が、無理なく行動を始めるための具体的なワークを3つご紹介します。日常生活の中で簡単に取り入れられるものばかりですので、ぜひ試してみてください。
なぜ完璧主義だと行動できないのか
完璧主義の方は、目標設定が高いだけでなく、失敗を極度に恐れる傾向があります。「完璧にできないならやらない方がいい」と考えてしまったり、準備に時間をかけすぎたりすることで、なかなか行動に移せないことがあります。
また、物事を始める前に、ありとあらゆる可能性や懸念事項を想定し、完璧な計画を立てようとします。これは一見、計画性があるように見えますが、複雑になりすぎたり、時間がかかりすぎたりして、結局行動に移せなくなってしまうことも少なくありません。
さらに、他人の評価や期待を強く意識するため、「失敗したらどうしよう」「がっかりされたくない」という気持ちが、行動を阻むブレーキとなることがあります。
しかし、どんな大きなことも、最初の一歩から始まります。そして、最初から完璧である必要はありません。むしろ、まずは小さく始めて、試行錯誤しながら進めていく方が、結果的に良いものになることも多いのです。
行動のハードルを下げるための3つのワーク
完璧主義の「行動できない」ループから抜け出し、スムーズに最初の一歩を踏み出すためのワークをご紹介します。
ワーク1:タスクを「赤ちゃんサイズ」に分解する
大きなタスクを見ると、圧倒されてしまうことがあります。例えば、「部屋全体を片付ける」「企画書を完成させる」「子どもの入園準備を全て終わらせる」といったタスクです。これらを一気にやろうとすると、「どこから手をつければいいか分からない」「時間がかかる」と感じて、行動が止まってしまいます。
ここで試していただきたいのが、「タスクを赤ちゃんサイズに分解する」ワークです。赤ちゃんでもできるくらい、ごくごく小さな、簡単で具体的なステップに分解するのです。
- やり方:
- 大きなタスクを書き出してみます。
- そのタスクを構成する小さなステップを考えます。
- さらに、その小さなステップを、もはや考えなくてもできるくらいの「赤ちゃんサイズ」の行動に分解します。
- 具体例:
- 「部屋全体を片付ける」→「机の上だけ片付ける」→「机の上のペンをペン立てに戻す」
- 「企画書を完成させる」→「企画書の構成を考える」→「企画書のタイトルと目次だけ書き出す」
- 「子どもの入園準備(名前付け)」→「洋服の名前付け」→「洋服1枚だけ名前付けをする」
- ポイント:
- 考えうる最小のステップにすることが重要です。例えば、「資料を開く」「パソコンの電源を入れる」といったレベルでも構いません。
- 分解したリストの中から、「これならすぐにできそう」「5分もかからなそう」と思えるものを選んで、まずは一つだけやってみます。
- 一つできたら、チェックをつけたり、自分を褒めたりしましょう。
このワークは、大きなタスクを小さくすることで心理的なハードルを下げ、「これならできる」という感覚を生み出します。小さな成功体験を積み重ねることで、次のステップに進むモチベーションにもつながります。
ワーク2:「5分だけタイマー」で強制スタート
「やる気が出ない」「完璧にやろうと思うと腰が重い」という時に有効なのが、「5分だけタイマー」ワークです。クオリティは一切問わず、「とりあえず5分だけ、そのタスクに関わってみる」というルールで時間を区切ります。
- やり方:
- 始めたいけれど腰が重いタスクを決めます。
- スマートフォンのタイマーやキッチンタイマーを5分にセットします。
- タイマーがスタートしたら、タイマーが鳴るまでの5分間、とりあえずそのタスクに関わる行動をします。完璧にやる必要はありません。集中できなくても、気が散っても構いません。「とりあえず、タスクの前に座る」「資料を開く」「関連するメールを一つ読む」といったレベルで十分です。
- 5分経ってタイマーが鳴ったら、そこで中断しても、もう少し続けても構いません。
- 具体例:
- 「夕食の準備」→「とりあえず冷蔵庫を開けて、何があるか5分眺める」
- 「仕事の報告書作成」→「とりあえずパソコンを立ち上げて、報告書のファイルを開き、何も書かなくても5分画面を見る」
- 「子どものおもちゃの片付け」→「とりあえず5分だけ、目についたおもちゃを一つカゴに入れる」
- ポイント:
- あくまで「5分だけ」と割り切ることが重要です。完璧を目指すプレッシャーから解放されます。
- 5分経ったときに、「意外と集中できた」「もう少し続けられそう」と感じることもあります。その場合はそのまま続けても良いですし、疲れたら中断して後で再開しても構いません。
- 「5分やった自分、えらい」と、できたことを認めましょう。
このワークは、とにかく「始める」ための物理的なハードルを下げる効果があります。「完璧にやろう」という思考を一時停止し、「まずは行動する」という習慣をつける練習になります。
ワーク3:「これでOK」の合格ラインを下げる練習
完璧主義の最大のハードルの一つは、「完璧でないとダメだ」という思考です。しかし、現実には、完璧でなくても十分に良い結果が得られること、あるいは、完璧を目指すよりも早く終わらせることの方が価値がある場面が多く存在します。
このワークでは、「これでOK」の合格ラインを意図的に下げる練習をします。
- やり方:
- これから取り組むタスクについて、「完璧な状態」を想像してみます。
- 次に、「完璧ではないけれど、目的は果たせる状態」「最低限これだけやればOKという状態」を考えてみます。
- あえて、後者の「最低限OKライン」を目指してタスクに取り組みます。
- 具体例:
- 「夕食を準備する」
- 完璧:「彩り豊かで栄養バランスも完璧な手作り複数品」
- 最低限OK:「メインだけ手作りして、副菜は買ってきたものや冷凍食品を活用」→今日は「メイン+何か一品」でOKとする。
- 「部屋の掃除」
- 完璧:「床に埃一つなく、全てが整然と片付いている状態」
- 最低限OK:「人が来たときに最低限恥ずかしくない程度」「過ごすスペースだけ確保できている状態」→今日は「リビングのテーブルの上だけ片付ける」でOKとする。
- 「仕事のメール返信」
- 完璧:「相手が疑問に思うであろう点を全て先回りして丁寧に説明し、言葉遣いも完璧な美しい文章」
- 最低限OK:「質問に対する回答だけを、箇条書きでもいいから分かりやすく伝える」→今日は「要点を簡潔に伝える」ことに集中し、細部まで練り上げないでOKとする。
- 「夕食を準備する」
- ポイント:
- 最初は「本当にこれでいいのかな」と不安になるかもしれません。しかし、これは「練習」です。意図的にハードルを下げてみることで、「意外と大丈夫だった」「それでも目的は果たせた」という経験を積むことが重要です。
- 特に時間がない時は、「最低限OKライン」を意識することが、タスクを終わらせるために非常に役立ちます。
- 「これでOK」と自分で許可を出す練習をすることで、自分を縛り付けている完璧主義の思考パターンを少しずつ緩めていくことができます。
実践する上での困難と継続のヒント
これらのワークを試しても、完璧を目指す思考が出てきたり、うまくいかずに自己嫌悪に陥ったりすることがあるかもしれません。それは自然なことです。長年の思考パターンは簡単には変わりません。
大切なのは、「完璧にワークをこなそうとしないこと」です。
- 毎日できなくてもOK: 毎日すべてのタスクで「赤ちゃんサイズ」に分解したり、「5分だけタイマー」を使ったりする必要はありません。「今日は特に腰が重いな」と感じた時や、「このタスクは大きく感じすぎる」と思った時に、これらのワークを思い出して試してみるだけで十分です。
- できたことに目を向ける: たとえ5分しかできなかったとしても、タスクの前に座っただけでも、赤ちゃんサイズのステップを一つ踏み出せただけでも、それは素晴らしい一歩です。「できなかったこと」ではなく、「できたこと」に意識を向け、自分を労いましょう。「5分でもやった私、すごい」「昨日より一歩進めた」と、小さな成功を認めてあげてください。
- 自分を責めない: うまくいかなかったり、結局始められなかったりしても、自分を責めないでください。完璧主義の思考が出ている自分に気づけただけでも進歩です。「また完璧を目指そうとしてるな」「今日は疲れているから難しいな」と、客観的に自分の状態を観察し、自分に優しく接しましょう。
小さな一歩が未来を変える
最初の一歩を踏み出すことは、タスクを完了させるだけでなく、自分自身の自信にもつながります。完璧でなくても行動できた、という経験は、「私はできる」という自己肯定感を育みます。
完璧主義を手放し、心穏やかに日常を送るためには、自分に優しくあること、そして「小さく始める勇気」を持つことが大切です。今回ご紹介したワークが、あなたの「最初の一歩」を後押しし、自分を責める時間を減らし、心穏やかな時間を取り戻すための一助となれば幸いです。
まずは、今日これからやる小さなタスク一つで、「赤ちゃんサイズ」に分解したり、「5分だけタイマー」を試したり、「最低限OKライン」で取り組んでみたりすることから始めてみませんか。あなたのペースで、できることから試してみてください。