「ちゃんと」を手放し、「ざっくりOK」を見つけるヒント。完璧主義をゆるめる考え方とワーク
「ちゃんと」やらないと、と思って疲れていませんか
毎日、仕事に家事に育児にと、本当に頑張っていらっしゃると思います。 「ちゃんと」しなければ。 「ちゃんと」終わらせなければ。 「ちゃんと」した母親でなければ。 「ちゃんと」した妻でなければ。 「ちゃんと」した会社員でなければ。
こんなふうに、「ちゃんと」という言葉が頭の中でこだましていませんか。
完璧主義な傾向がある方は、知らず知らずのうちに自分に高い基準を課し、「ちゃんと」できない自分を責めてしまいがちです。時間にも追われ、心にゆとりがなくなり、疲弊してしまう。そんな状態は、本当に辛いものです。
でも、考えてみてください。全てのことを、いつでも100パーセント「ちゃんと」こなすことは、現実的に可能でしょうか。そして、それは本当に必要でしょうか。
この記事では、「ちゃんと」を手放し、「ざっくりOK」という新しい基準で物事に取り組むことで、心穏やかに日常を送るためのヒントと具体的なワークをご紹介します。
なぜ「ちゃんと」が私たちを苦しめるのか
「ちゃんと」という言葉の裏には、しばしば他者からの評価への恐れや、「こうあるべき」という強い内なる声が潜んでいます。完璧にこなさなければ認められない、評価が下がる、という無意識の思い込みが、私たちを駆り立てるのです。
しかし、常に「ちゃんと」を目指すことは、大きなエネルギーを消耗します。そして、完璧にできない自分に失望し、自己嫌悪に陥るサイクルを生み出してしまいます。これは、心身の健康にとって大きな負担となります。
ここで提案したいのが、「ざっくりOK」という考え方です。これは決して無責任になるということではありません。求められる質を見極め、必要十分なレベルで終えること。つまり、完璧でなくても、目的が達成できていればOKとする柔軟な基準を持つことです。
「ざっくりOK」を取り入れることで、以下のようなメリットが得られます。
- 時間的な余裕が生まれる: 完璧を追求しない分、早くタスクを終えられます。
- 精神的な余裕が生まれる: 「ちゃんと」しなければ、というプレッシャーから解放されます。
- 自己肯定感が向上する: 完璧でなくても「できた」ことに目を向けられるようになります。
- 新しいことに挑戦しやすくなる: 失敗への恐れが軽減されます。
具体的な「ざっくりOK」ワーク
それでは、日常に「ざっくりOK」を取り入れるための具体的なワークを試してみましょう。無理なく、小さなステップから始めてみてください。
ワーク1:タスクの「ちゃんとレベル」を見直すワーク
あなたの日常にあるタスクを書き出してみましょう。仕事のこと、家事のこと、育児のこと、プライベートのこと、何でも構いません。そして、それぞれのタスクに、どのくらいの「ちゃんとレベル」が本当に必要かを考えてみます。
「ちゃんとレベル」の例: * S:完璧主義レベル(一切の妥協なく、最高の質を目指す) * A:高水準レベル(高い質が求められるが、多少の融通は利く) * B:標準レベル(一般的、社会的に見て問題ないレベル) * C:ざっくりOKレベル(最低限の目的が達成できれば良しとする) * D:やらないレベル(そもそもやる必要がないタスク)
例: * 取引先への重要なメール作成:AまたはB * 今日の夕食作り:BまたはC * 洗濯物を畳んで収納する:CまたはD * 子どもの保育園の持ち物準備:A(記名など重要な部分は)C(多少シワがあっても) * リビングの片付け:CまたはD(見えるところだけ、など) * SNSでの情報収集:D(気分が落ち込むなら)
それぞれのタスクについて、「今まではSやAを目指していたけれど、本当に必要なのはBやCレベルではないか?」と問い直してみてください。特に、自分一人で抱え込んでいる家事や育児のタスクの中に、レベルを下げられるものがないか探してみましょう。他の人(家族など)に任せるなら、どのレベルでOKか考えてみるのも良いヒントになります。
ワーク2:「これでOK」基準を「ざっくり」に設定するワーク
ワーク1で見直したタスクのうち、特に「ざっくりOK」に設定したいタスクを選んでみましょう。そして、そのタスクについて、「完璧にできた状態」ではなく、「これくらいならOK」という具体的な「ざっくりOK」のラインを決めます。
ポイントは、ハードルを限りなく下げることです。
例: * 洗濯物畳み:「全てきれいに畳む」ではなく「次の日に着るものだけハンガーにかける」「家族ごとのかごに放り込むだけ」。 * 夕食作り:「栄養バランスの取れた手作り3品」ではなく「一汁一菜+市販のお惣菜1品でOK」「丼ものや麺類で簡単に済ませる」。 * 部屋の片付け:「家中ピカピカ」ではなく「リビングのテーブルの上だけ何も置かない」「床に落ちているものだけ拾う」。 * 子どもの寝かしつけ:「絵本を3冊読んで、歌を歌って、寝付くまで寄り添う」ではなく「絵本を1冊読んで、布団に入れたら部屋を出る」。
この「ざっくりOK」基準を、紙に書き出したり、スマホのメモ機能に残したりして、「見える化」するのも効果的です。完璧を目指す自分が出てきそうになったときに、このメモを見返すことで、意識を「ざっくりOK」に戻す手助けになります。
ワーク3:「ざっくりOK」で意図的に終わらせる練習
ワーク2で決めた「ざっくりOK」基準を使って、実際にタスクを意図的に「ざっくり」終わらせてみましょう。
例えば、今日の夕食は「一汁一菜+お惣菜1品」と決めたら、レシピを検索したり凝った料理を作ったりせず、本当にその基準で終わらせます。洗濯物も、「家族ごとのかごに入れるだけ」と決めたら、迷わずかごに放り込んで終わりにします。
タスクを「ざっくり」終わらせた後、どんな気持ちになるか観察してみてください。「罪悪感がある」「これで大丈夫かなと不安になる」といった感情に気づくかもしれません。それは、あなたが今まで「ちゃんと」やること、完璧に近づけることに価値を置いてきた証拠です。
次に、「でも大丈夫だったこと」に目を向けてみましょう。夕食がお惣菜でも、家族は「美味しいね」と言ってくれたかもしれません。洗濯物が畳んでなくても、着たい服は見つけられたかもしれません。
「ざっくりOK」で終わらせたことによって、どんな時間や心の余裕が生まれたでしょうか? そのメリットに意識を向けることが大切です。小さなタスクから始めて、成功体験を積み重ねていきましょう。
「ざっくりOK」を続けるためのヒント
「ざっくりOK」は、一度試して終わりではなく、日常の習慣にしていくことが理想です。続けるためのヒントをいくつかご紹介します。
- 「ざっくりOK」はサボりではないと認識する: これは手抜きではなく、あなたの心と時間を守るための、賢い選択です。目的は「ちゃんとやること」ではなく、「必要なことを完了させること」に焦点を当てましょう。
- 完璧主義の「声」に気づく: 「こんなんじゃダメだ」「もっとできるはず」といった完璧主義の思考パターンが現れたら、「あ、また完璧主義の私が出てきたな」と客観的に観察します。その声に耳を傾けすぎず、ワークで決めた「ざっくりOK」基準を思い出しましょう。
- 他者と比較しない: SNSや他人の家事・育児ぶりを見て、「ちゃんと」できていないと落ち込む必要はありません。あなたの「ざっくりOK」は、あなたの状況に合わせた最適な基準です。他人との比較は避け、自分自身の基準に集中しましょう。
- 協力者を得る: パートナーや家族に、「このタスクはこれくらいのレベルでOKにしたいんだ」と共有してみましょう。あなたの基準を理解してもらうことで、協力を得やすくなったり、「やらなきゃ」というプレッシャーが軽減されたりすることがあります。
- 「できたこと」に目を向ける: 完璧を目指すと、どうしても「できなかったこと」「足りないこと」に目がいきがちです。「ざっくりOK」で終わらせたタスクも、「終わらせることができた」という事実に注目し、自分を褒めてあげてください。
まとめ:「ちゃんと」を手放し、心に余白を
「ちゃんと」やろうと頑張りすぎること。それは、周りの期待に応えようとする優しさや、物事を真剣に捉える誠実さの表れかもしれません。ですが、それが自分自身を追い詰め、疲弊させてしまうのであれば、少し立ち止まって基準を見直す時かもしれません。
「ざっくりOK」は、あなたの価値を下げるものではありません。むしろ、限られた時間の中で、本当に大切にしたいことのためにエネルギーを残しておくための知恵です。完璧主義を手放し、「ざっくりOK」を自分に許可することで、心にゆとりが生まれ、日常の小さな幸せに気づきやすくなります。
完璧でなくても大丈夫。あなたは十分頑張っています。小さな「ざっくりOK」から始めて、心穏やかな日常を取り戻していきましょう。